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女性泌尿器の悩みに対応 骨盤底再建センターを開設

女性泌尿器の悩みに対応  骨盤底再建センターを開設

医療法人真栄会 にいむら病院
新村 友季子 理事長(にいむら・ときこ)

2005年鹿児島大学医学部卒業。
鹿児島市医師会病院などを経て、2007年医療法人真栄会にいむら病院入職、
2015年から現職。

 1980年の開設以来、泌尿器科の先進医療の提供に努めてきた医療法人真栄会にいむら病院。2014年には、女性専門医による女性のための診療も本格スタートさせている。新村友季子理事長が目指す女性のトータルヘルスケアの方向性について聞いた。

―女性の患者さんを大切にされています。

 女性の健康は、ホルモンの変動をはじめ、就職、結婚、出産、育児、介護など、生活の変化と密接に関わっています。医師は、女性の患者さん個々のライフステージ、ライフイベントを十分に理解した上で、疾患の診断や治療を行うことが重要です。

 2007年に入職してから、実現すべき診療の方向性の一つとして、女性のトータルヘルスケアを目指してきました。その最初の取り組みが、2014年開設の女性泌尿器科外来です。

 適切な検査と治療を行えば改善するはずの疾患でありながら、「恥ずかしい」という気持ちから病院の扉をノックできず、一人で悩んでいるうちにこじらせてしまうケースが珍しくありません。

 原因の一つに女性医師の少なさがあります。厚労省が2017年に調査した「女性医師に関する現状と国における支援策について」によると、日本の女性医師の割合は約20%、泌尿器科は5%にしか過ぎません。泌尿器科の受診を望む女性の患者さんは、女性医師に相談する機会があらかじめ限定されていると言えます。

 人知れず悩む女性に対して手を差し伸べるため、当院では女性医師による相談や診療を行う女性専用外来をオープンしました。この評判が市外や県外にまで広がり、多くの患者さんが来院されています。

―骨盤底再建センターを開設されました。

 2020年4月、女性泌尿器科とは隣同士のような医療領域である婦人科外来を、大学との連携により開設しました。女性医師による完全予約制です。これを機に、以前から設置していた骨盤底筋体操外来を拡充し、各医療領域の専門スタッフを結集して、女性に多く発症する骨盤底障害などを診療する「骨盤底再建センター」をスタートさせました。

 骨盤底は、膀胱や直腸など骨盤内臓器を下から支える筋肉や靭帯から構成されます。この筋肉が弱くなり、また損傷を受けると、骨盤内臓器が垂れ下がり、体外に脱出する場合もあります。

 骨盤底は尿や便の排泄機能も担っており、尿失禁症も起こります。尿失禁症には2種類あり、腹圧性尿失禁は咳やくしゃみで尿もれを起こします。切迫性尿失禁は突然おしっこがしたくなり、漏らしてしまいます。いずれも生活や仕事などに支障を来します。

 原因として出産、肥満症、加齢、腹圧など、複数の要因が関係しています。骨盤底再建センターでは女性医師が診察や検査を行い、骨盤底全般の悩みに対応しています。尿もれや過活動膀胱の治療は、まず薬を処方し、症状の改善を図ります。不十分な場合は手術をお勧めするほか、膀胱の過剰反応を抑える薬剤を注射する治療も行っています。

―その他の取り組みは。

 弱った筋肉を強化する骨盤底筋体操を取り入れています。1940年代に米国の産婦人科医が考案したこの体操は各国に広まっていますが、当院では患者さん個々に応じた体操を理学療法士が適切に指導します。

 女性ホルモンが低下する中年期以降の女性の生活の質に影響を与える「GSM(閉経後尿路性器症候群)」の症状を改善するインティマレーザー治療も行っています。尿もれにも効果があります。

 女性患者さんから感謝の言葉も届いています。「先生がいつまでも診療を続けてくれることが私の最大の希望です」との言葉をいただいた時はうれしくなりました。今後も女性に寄り添った診療を続けていきます。

医療法人真栄会 にいむら病院
鹿児島市西田2―26―20
☎︎099―256―6200(代表)
http://niimura-hp.or.jp/

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