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多職種によるチーム医療 栄養指導を早期から実践

多職種によるチーム医療 栄養指導を早期から実践

京都大学大学院医学研究科 糖尿病・内分泌・栄養内科学
教授(いながき・のぶや)

1984年京都大学医学部卒業。
千葉大学医学部助教授、秋田大学医学部生理学第一講座教授、
同バイオサイエンス教育・研究センター長などを経て、2005年から現職。

 新型コロナウイルスの感染拡大の中、各メディアで糖尿病患者の感染対策について情報発信を続けてきた稲垣暢也教授。京都府糖尿病協会長なども兼任し、長年、啓発活動に注力している。教室は臨床内科学としては珍しい栄養内科を掲げ、高まるニーズに先手を打ってきた。

─京都府の糖尿病対策の現状、教室の役割は。

 WHOが11月14日を世界糖尿病デーに認定したのが2006年。その前年に京都府医師会内に糖尿病対策推進事業委員会が立ち上がり、私も委員長として行政と連携して活動を続けてきました。

 最近では、糖尿病性腎症重症化予防のため、どの地域でも適切な保健指導が定期的に受けられるよう、府では地域戦略会議を8カ所に設置し、保健師や栄養士、薬剤師などの人材育成に注力。さらに重症化予防プログラムを作成し、検診で異常値なのに未受診の人や治療を中断している人などに電話や訪問でコンタクトを試みてきました。

 この試みは、本格的に始まってまだ2年ほど。京都府の新規人工透析導入数は現在、全国平均並みですが今後、減少を期待したいですね。

 糖尿病教室も継続しています。糖尿病は自己管理の疾患ですので、初期教育が非常に重要。地道に広めていくのも役目の一つです。

 糖尿病は、臓器ではなく全身を診る疾患。教室での研究は多岐にわたり、治療法の開発も進んでいます。例えば、1型糖尿病患者に対し、ドナーの膵臓から分離した膵島(すいとう)を点滴で肝臓内に移植する膵島移植。2004年に京都大学が全国に先駆けて行い、2020年4月からようやく保険適用になりましたが、ドナーには限りがあります。

 そこで、京都大学iPS細胞研究所の長船健二先生の研究グループとともに、iPS細胞を用いて膵島に分化させる方法を研究中です。これを移植できれば根治的な治療法になり得るでしょう。

─栄養学は古い歴史をお持ちです。

 教室は2013年に糖尿病・栄養内科学講座と内分泌・代謝内科学講座が統合して誕生しました。糖尿病・栄養内科学講座のルーツは1933年開設の「食餌療法研究室」で、後に「栄養治療室」に発展。すでに医師と栄養士が協力して治療に当たっています。

 1960年には外来も開設。わが国で栄養士が医療現場に入りだしたのはおそらく2000年代からですので、半世紀近くも先取りしてチーム医療を実践していたことになります。医師の受診と併せて栄養指導を受ける流れは今も受け継がれています。

─これまでの研究やその成果は。

 栄養指導には基礎代謝量の把握が欠かせません。この推定式を、当教室の池田香織助教が大学院生だった2012年に発表しました。【10×体重─3×年齢+750+125(男性のみ)】という簡便な式ですが、65歳以上においての正確さは、最近アメリカの学会誌で取り上げられたところです。

 管理栄養士は当科だけでなく、肝胆膵・移植外科、呼吸器外科、血液内科などの担当病棟で活躍しています。特筆すべきは生体肝移植における介入です。

 京都大学では生体肝移植を多数行っており、年々成績は向上していますが、一定の死亡はどうしても免れない。しかし、術前術後に栄養管理が入ることで合併症が減り、治療成績が改善することが分かりました。栄養介入が効果をもたらした典型的な例でしょう。

 ひと昔前までは栄養に関心の薄かったドクターたちが近年、その重要性に注目しています。NST(栄養サポートチーム)の診療報酬加算が認められたのが2010年。本格的に始まってまだ10年です。連携による成果は今後、より見込まれるでしょう。

京都大学大学院医学研究科 糖尿病・内分泌・栄養内科学
京都市左京区聖護院川原町54
☎075―751―3111(代表)
http://metab-kyoto-u.jp/

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