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多様性を尊重 新たな歴史を紡ぐ

多様性を尊重 新たな歴史を紡ぐ

九州大学大学院 医学研究院 神経内科学教室
磯部 紀子 教授(いそべ・のりこ)
2003年九州大学医学部卒業。日本学術振興会海外特別研究員、
米カルフォルニア大学サンフランシスコ校、九州大学大学院医学研究院
神経内科学教室特任准教授などを経て、2021年から現職。

 1963年に国内で初めて独立した神経内科として設立された歴史ある教室の新教授となった磯部紀子氏。教室運営の指針に「多様性の尊重」を掲げ、これまでの歴史や伝統を重んじつつ、新たな風を吹かせようとしている。


神経難病の克服を 多様な研究を進行

 半世紀以上の歴史を持つ日本で最も古い神経内科学教室の教授のバトンを、4月に受け継いだ。「責任の大きさを感じています」と正直な胸の内を語る磯部氏は、教室の伝統や強みを継承しながら、少しずつ自身のカラーを融合させることを思い描いている。

 これまでの教室の取り組みとして代表的なのが、多発性硬化症(MS)に関する臨床研究だ。1972年以降、九州大学が中心となって期的にMSの全国臨床疫学調査を行っている。2017年からは5回目となる調査を開始。国内のMSと視神経脊髄炎(NMO)の患者数を調べ、前回調査時から診断基準が大きく変わったことに伴って診断がどう変化したかなどを明らかにする。磯部氏は研究の共同委員長を務めており、結果を近く論文化する予定という。

 「この臨床研究で、当教室は九州だけではなく日本全体のエビデンスをつくり、世界に発信してきました。今後も引き続き取り組みながら、その他の研究にも力を入れていきたいですね」

 最近では山﨑亮准教授を中心に、(ALS)についてマクロファージによる末梢神経の保護が進行を抑えることを証明した他、神経障害性疼痛(とうつう)の新たな発症機序の解明などさまざまな研究を進行させ
ている。


難病医療システム さらなる連携を

 先代教授の吉良潤一氏は、地域の難病医療の体制構築に尽力した。現在は学会に発展した「日本難病医療ネットワーク研究会」を2004年に発足させ、福岡県内では行政を含めた多職種による難病患者が療養しやすい環境づくりを主導してきた。磯部氏は、さらに地域との連携をスムーズにして難病患者の生活の質を向上させることを目指す。

 「地域の先生方は難病の患者さんの対応に苦慮することがあり、一方で患者さんの中には遠方から大学病院へ通院する人もいる。課題を解決し、患者さん、地域の医療機関、大学がそれぞれ『ハッピー』になれる体制にしたいと思っています」

 今後は地域の医療機関との役割分担をより明確にし、勉強会などを定期的に開催しながら難病患者の紹介・逆紹介を円滑にすることや、専門医による遠隔診療の導入なども視野に入れているという。


留学で多様性実感 新しい教室像模索

 好きな言葉は、「多様性」性別、年齢、国籍などに関係なく、自分や相手の価値観・ライフスタイルを尊重することは以前から意識してきたが、その姿勢がより強くなったのは、2010年からの米国留学がきっかけだった。

 「現地では、当たり前だと思っていたことがそうではなく、型にはまらないことが当たり前でした。組織に縛られ過ぎず、自分の人生を生きることを大切にする仲間に囲まれ、大いに刺激を受けましたね」と当時を振り返る。

 その経験から、教室員がやりたいことを実現できる「足掛かりの場」として教室が機能するようにしたいというビジョンを持つ。教室員が関心がある分野ややりたいことを尊重しながらキャリア形成を手助けすると同時に、自由に意見が出し合える風通しの良さも育んでいく。

 40代前半での教授への就任は、吉良氏と共通している。20年以上にわたって長くかじを取ってきた恩師のように、長期的な視野で新たな教室の形を模索し、実現していく。



九州大学大学院 医学研究院 神経内科学教室
福岡市東区馬出3-1-1 ☎092-641-1151(代表)
https://www.neuro.med.kyushu-u.ac.jp/

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