九州医事新報社 - 医療・医学の〝今〟を伝えて62年

多彩な活動プログラムで治療、回復を継続支援

多彩な活動プログラムで治療、回復を継続支援


理事長・院長(にしわき・けんざぶろう)

1972年大阪医科大学卒業、
長崎大学医学部附属病院精神神経科(現:長崎大学病院精神神経科学)入局。
長崎県立東浦病院(現:長崎県精神医療センター)などを経て、1982年から現職。

 有名な漫画のモデルとなり、作品の監修も務めた西脇健三郎理事長・院長。長崎県で40年以上にわたって精神科臨床医として患者に接してきた。その経験を基に、現在の精神科医療に対して、さまざまな提言を行っている。

─精神科医療の問題点は。

 1950(昭和25)年、近代的な精神衛生の考えに基づく「精神衛生法」が制定されてから70年になります。その間にわが国の精神科医療は、大きく変化しました。

 最初にこの法律ができたのは戦後間もない混乱時であり、自傷他害の恐れがある精神障害者に対して措置入院するといった制度ができたのです。そこから昭和40年代にかけての高度経済成長期には、精神科病院開設ラッシュとも言える現象が起こり、長期入院や社会的入院のための精神科病床が全国で急増しました。

─疾患の傾向は。

 現在は、統合失調症患者が大幅に減少しています。当院は1957年に開設。当初は初診患者の半数以上が統合失調症でした。しかし、2019年では10%以下となっています。

 統合失調症の発症率は100人に1人と言われていますので、少子化が進む現在、母数が減るので、当然、子数となる患者数が減ります。一方で、近年、他の精神疾患が増加。精神疾患は5疾病の一つになっているものの、わが国の精神科医療は、こうした疾病構造の変化に対応できていません。

 現在の精神科医療については、大きく分けて二つの理解が必要です。一つは統合失調症、先に述べたように患者数は減少していますが、まだ治療的な支援は不十分です。もう一つは近年増加している職場の人間関係などのストレスから発症するうつ病とさまざまな依存症。これらは過労死や自殺につながります。このような患者さんの多くは職能や対人関係のスキルが高く、ルールを順守し、責任感も強いことから、ワーカホリックに陥る傾向があります。

 今、私たち精神科医は、このような患者さんとの関わりに〝長(た)けている〟とは言いがたい現状にあります。また、前者と後者では、回復のゴールへの進め方は異なります。

 後者の回復の難しさは、患者自身が病を認めない、受け入れないといった「否認」の問題があります。これらの患者さんには職能において優れたスキルがあり、プライドが高い人も多いので、そのプライドをくすぐることも治療のテクニックの一つです。

 例えば、最近のアルコール依存症は、以前のような社会的逸脱行為は少なく、しらふの時は穏やかで勤勉な方が多くなっています。そこで、私は彼らに対して、決して「どれくらいお酒を飲みましたか」とは尋ねず、まず勤勉な時期の話題から入るようにしています。「説得」ではなく、患者自身が「納得」することが治療、回復における重要なキーワードになるからです。

─回復のための道筋は。

 うつ病、依存症などの治療、回復のためには、切れ目のない支援体制の整備が重要です。当院では、急性期の治療が終わった患者さんやそのご家族を対象に、ARP(アディクション・リハビリテーション・プログラム)などの多彩な活動プログラムを用意し、入院中から退院後まで継続した支援を行っています。回復のためには当事者、家族、支援者の相互連携が重要であり、第三者の声を聞くことによる「気づき」をもたらします。

 また、アルコール依存症患者のためのAA(アルコホーリクス・アノニマス)、ギャンブル依存症患者のためのGA(ギャンブラーズ・アノニマス)など、依存症自助グループへの会場提供を無償で行い、必要な患者さんには参加を呼び掛けています。

 医師として今後も、旧来の精神科医療に対する考えを改め、現状を多くの人に知っていただけるよう努めていきたいと思います。

医療法人志仁会 西脇病院
長崎市桜木町3―14
☎095―827―1187(代表)
https://www.nishiwaki.or.jp/

この記事を読んだ方は他にこんな記事も読んでいます

最新の記事情報が取得できます

Twitter

「いいね!」ボタンを押すと、最新情報がすぐに確認できるようになります。

Instagram

フォローする」ボタンを押すと、最新情報がすぐにツイート上で確認できるようになります。

Instagram did not return a 200.

コメントはこちらから

[contact-form-7 404 "Not Found"]
メニューを閉じる