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多彩な治療法とチーム医療で増加する頭頸部がんに挑む

多彩な治療法とチーム医療で増加する頭頸部がんに挑む

神戸大学大学院医学研究科外科系講座 耳鼻咽喉科頭頸部外科学分野
教授(にぶ・けんいち)

1986年東京大学医学部卒業。
米ジェファーソン医科大学耳鼻咽喉科・がん研究所留学、
東京大学医学部附属病院耳鼻咽喉科・聴覚音声外科講師などを経て、2001年から現職。

 伝統的に頭頸部がんの診断と治療で実績を上げてきた神戸大学耳鼻咽喉科頭頸部外科学分野。診療科を超えてのチーム医療、多彩なアプローチによる患者のQOLに配慮した治療や研究とはどのようなものか。今後の展望を含めて、丹生健一教授に話を聞いた。

―教室の特徴は。

 頭頸部がんの診断と治療を中心に、耳鼻科領域の聴覚、嗅覚、音声の障害、また高齢に伴う嚥下(えんげ)障害の臨床とそれに直結した研究を行っています。

 頭頸部領域では摘出手術を行うと容貌、食事、会話、味覚や嗅覚などQOLに関わる機能の低下は避けられません。1960年代から放射線と抗がん剤、手術を組み合わせた集学的治療を積極的に行っています。

 他科との協力については、当院には、放射線腫瘍科が治療部門として独立しており、国立大学には珍しい美容外科もあります。また腫瘍・血液内科でも、頭頸部がんをメインにしているグループにおいて薬物治療などの治療法や研究も進んでおり、お互い協力しています。

 頭頸部がんでは高齢に伴う臓器機能や認知機能の低下、糖尿病や心臓疾患のある方もいます。こうした合併症の患者さんの場合、その患部だけではなく全身を診なければいけないため、チームでの集学的治療のほか多職種での治療が必要になります。耳鼻科を担当する3人の言語聴覚士による嚥下障害の支持療法のほか、緩和ケア科による精神的なケアも手厚く行われています。

 研究では、耳下腺がんなどの唾液腺がんは遺伝子の染色体変異の確率が高いことが分かってきたため、遺伝子診断で効果の高い薬を一般の診療での応用に向けて研究を進めています。また、さまざまなタイプの遺伝子治療を臨床応用できるよう基礎研究を続けています。

 教育に関しては、耳鼻咽喉科専門医を取得するために4年間を要しますが、1年目は大学で研修を行い、耳鼻、咽頭、頭頸部と広い領域を3カ月ごとにローテーション。それぞれの指導医の下で学びます。専門医を取得後は、耳鼻科の領域でのエキスパートを目指します。

―最新治療について。

 早期がんであれば経口的切除が可能なため、内視鏡や顕微鏡で低侵襲な手術を行うことができます。

 また上顎がんでは上顎洞のがんの栄養血管にカテーテルを入れて直接抗がん剤を投入し、全身では抗がん剤を中和する超選択的動注化学療法と放射線を併用することで、手術せず容貌や機能を損なうことのない治療を行います。

 低侵襲手術や化学療法などでは治療が難しい進行がんに対しては、当院の脳神経外科や形成外科と連携した拡大切除や頭蓋底手術を行い、再建する方法で根治を目指します。こうした多彩なアプローチができるというのが当院の強みではないかと思います。

 また西日本の拠点として新薬の治験も多く行っており、標準治療で治療できなかった患者さんに対しては、免疫チェックポイント阻害剤や切除不能のがんに対する光免疫療法などの治験も行っています。

―今後の展望は。

 高齢化とともに頭頸部がんは増えています。しかし他の臓器と比較すると希少がんのため、多くの症例で治験を行うことが難しいのが現状です。

 製薬企業や医療機器メーカーと連携を取り、新しい薬物療法や医療機器の臨床応用が保険適用されるよう貢献していきたいと思っています。

 頭頸部に限らず他の領域でも高い水準で臨床や研究ができるようになってきました。これを維持し、次の世代へ引き継いでいってもらうためにも働き方改革も含めて、今後の後進の育成にも力を入れていきたいと思っています。

神戸大学大学院 医学研究科外科系講座 耳鼻咽喉科頭頸部外科学分野
神戸市中央区楠町7―5―1
☎078―382―5111(代表)
http://www.med.kobe-u.ac.jp/jibi/

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