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基軸は「患者のために」 地域医療のさらなる強化へ

基軸は「患者のために」 地域医療のさらなる強化へ

京都大学医学部附属病院 宮本 享 病院長(みやもと・すすむ)
1982年京都大学医学部卒業。
国立循環器病センター(現:国立循環器病研究センター)脳神経外科部長、
京都大学大学院医学研究科脳神経外科学教授、同附属病院副病院長などを経て、
2019年から現職。

 創立120周年の今年は、新病棟が完成。ここ数年の大規模な設備投資で、高度急性期医療の機能も格段に向上し、来年以降も、さらなる整備計画を予定している。この4月に就任した宮本享新病院長に、これまでの経験を踏まえ、大学病院の未来像を聞いた。

運営面、経営面を改革

 近年の京都大学医学部附属病院は、2015年にヘリポートを備えた新病棟(南病棟)が竣工。2016年は先制医療・生活習慣病研究センターが完成した。今秋には、集中治療室を大幅に増床するほか、iPS等臨床試験センターも備えた新病棟(中病棟)が完成する。災害医療、高度急性期医療、高度先進医療などを担うべく、多方面から病院の機能を強化している。

 「増床に伴う人件費の増加、さらに今年は大型連休や建て替えに伴う稼働率の低下で、経営面は楽観視できる状況ではありません。しかしながら、患者さんの受け入れを効率的かつ積極的に行うことで、年度末までに、収支均衡に持っていくことができるという見通しを立てています」

 そのために必要なのが、病院の〝あるべき姿〟を、職員全員で共有すること。そして、各自が主体的に行動することだと言う。

大学病院の役割を果たすために

 高度先進医療は、大学病院の柱の一つ。がん治療では、同大学の本庶佑特別教授のノーベル生理学・医学賞受賞でも知られる免疫療法を実施。全国に11カ所あるがんゲノム医療中核拠点病院の一つとして個別化治療も進めている。またiPS細胞を用いたパーキンソン病への臨床試験が始まるなど、臨床研究中核病院としての役割は大きい。

 「一方で、高度先進医療は、地域医療の広い土台の上にあるべきだと考えます。高度急
性期医療や罹患(りかん)率の高い疾患の治療が、基盤であり、運営の基軸です。救急部門も、数年前からてこ入れし、現在、救急車の受け入れ件数も増加しています。迷った時、困難な時に病院が立ち戻るべきは、やはり〝for the patient〟です」

 病院長としては、マスタープランを示すことが何よりも重要だと言う。成熟したチームや組織においては、強いリーダーよりも、共通のマスタープランに基づいて、各自が自立的に動けるように導くリーダーが必要と語る。

 「大学の教育面においても、常にクリニカルクエスチョンを持って診療できる、
能動的な医師の育成を目指しています。学術的な研究を通してロジカルシンキングを教えるのが大学の役割の一つでしょう」

医局を飛び出し〝生涯一外科医〟でありたかった

 〝生涯一外科医〟を目指していた宮本病院長。学生時代は、自分が病院長になる姿など、想像もしていなかったという。

 その当時では珍しく、大学で研修をせずに飛び出した。「国立循環器病センター(当時)で見た手術があまりに素晴らしく、良い先生に巡り合って、学ぶことができました」。

 その先生とは、京都大学名誉教授であり、国立循環器病センター名誉総長、神戸市民病院機構理事長を歴任した菊池晴彦氏だ。氏に従うように、京都大学大学院へ戻ることとなる。

 「とてもいいチームでした。どんなに忙しくても、学会活動をおろそかにはしない。論文をまとめて学会で発表する。論文にできないものは論理性がないということを、叩き込まれました。今の若い医師たちにも、この思いを受け継いでほしい」

 10月9日(水)~12日(土)の4日間、大阪国際会議場(グランキューブ大阪)で開催される「日本脳神経外科学会第78回学術総会」で、会長を務める宮本病院長。「学会の規模が大きくなってほとんどの演題が採択される時代。私たちの時代は演題が採択されないと学会にも行けなかった。1年間かけて応募の準備をしたほどです」。そこで今回は〝会員による会員のための総会〟を目指し、あえて主題を設定しなかった。「シンポジウム企画の提案についても会員からの公募です」。会員が自主的に考え、運営していくことを願っている。

人材確保や地域連携を強化

 「私が育ってきた時代は、医師が睡眠時間を削るのは当たり前。仕事も、個人の努力によるところが大きかった。しかし、やはり時代として『働き方改革』は、進めるべき課題だと思います」

 個人で担っていた診療をチーム制にする、それに伴うレベルの低下をどうするのかなど、課題は多い。当面の大きな課題は、有期雇用契約のメディカルスタッフやCRC(治験コーディネーター)などの事務系のスタッフの常勤化だ。優秀な人材の流出を食い止めようと動き出している。

 また、地域連携のさらなる強化も今後の課題だ。

 「今は病院が、単独で生き残りを考える時代ではないでしょう。近隣の病院と競争するのではなく手を取り合い、時代に合った地域医療を模索していきたいですね」

 京都大学は、複数の府県に関連病院があるため、地域連携部分には長年課題があった。「これまでの歴史になかった部分ですが、積極的に声を掛けて、実現したいと思います」

京都大学医学部附属病院
京都市左京区聖護院川原町54 ☎075-751-3111(代表)
https://www.kuhp.kyoto-u.ac.jp/

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