独立行政法人国立病院機構 鹿児島医療センター 中島 均 副院長(なかしま・ひとし)
1984年鹿児島大学医学部卒業、同第一内科入局。小倉記念病院循環器内科、鹿児島大学第一内科、
国立南九州中央病院(現:鹿児島医療センター)第一循環器科などを経て、2017年から現職。
早期の医療介入が求められる心臓病・脳卒中。鹿児島医療センターは、心臓病・脳卒中救急センターを擁し、垣根のない医療で患者への迅速な対応を目指す。循環器内科医でもある中島均副院長に、これまでの経緯や現在の取り組みについて聞いた。
―心臓病・脳卒中救急センターとしての現状を教えてください。
当院は、以前「国立病院九州循環器病センター」と標榜し、診療にあたってきた歴史もあります。それだけに循環器病に関して、特に力を入れてきました。
2002年には脳卒中の救急患者さんに迅速に対応するため、当直制を開始。2年後には「脳卒中ホットライン」を設けました。
さらに2016年に従来の診療範囲を拡張し、専門医が24時間、365日直接対応する「心臓病・脳卒中救急センター」の運用を開始。2019年2月現在のスタッフ数は、循環器内科医が19人、心臓血管外科医が6人、脳血管内科医が6人、脳神経外科医が3人。充実した人員で高度専門医療を提供しています。
こうした体制は、各診療科の堅固な連携、協力体制のもとに成り立っており、高次医療機関としてのより充実した診療を可能にしていると思います。
―ハートチーム立ち上げの経緯は。
2017年にはハートチームを立ち上げました。とはいえ、当院ではすでに10年ほど前からこのハートチームと同様の機能を持つチームが機能していました。
例えば、ステントグラフト治療においては循環器内科と心臓血管外科が協力してきた実績があります。こうした合同の活動実績があったため、導入は非常にスムーズでした。
私としては、以前から患者さんを診るにあたって外科と内科を明確に区別する必要はないと考えていました。同時にできるものなら同時に、一緒に協力したほうがいいなら一緒に。いわゆる医師の〝ハイブリッド診療〟です。
そんな垣根のない医療を提供することが、患者さんに対してもベストな治療を提供することにつながると思っています。
―力を入れている治療は。
2016年には不整脈治療の冷凍もしくはホットバルーンによる肺静脈隔離術も導入しました。
経静脈電極抜去術によるリード抜去、経皮的カテーテル大動脈弁置換術・形成術(TAVI・BAV)も実施していますし、各種ステントグラフト治療、デバイス治療やカテーテルアブレーションも数多く施行しています。
これから取り組むのがマイトラクリップを使用した経皮的僧帽弁形成術です。間もなく開始できるだろうと思います。急性心筋梗塞などの治療に活用する経皮的補助人工心臓「インペラ(IMPELLA)」の導入も検討しています。
鹿児島にいるという理由で助けられない患者がないようにしたい。そのために、先端医療をできるだけ早期に導入していきたいと考えています。
ここ数年、当院を希望する研修医数は15人のフルマッチが続いています。その理由は、当院の「患者さんを中心とした垣根のない医療を展開する」という理念に、共感していただいているからではないかと考えています。
実際の現場では臨床倫理に絡む問題が多くあります。医師として自分が思う方向とは別の方針で治療を進めなければならないこともあります。
それでも、ずっとそばで患者さんを支えるのが医師の仕事です。難しいことですが、病気を治すためには、全人格として患者さんを捉え、チームで対応しなければできないような時代になっていると思います。
医師としての技量を磨くだけでなく、患者さんやスタッフと共に悩み、人間力を磨いていく―。そんな教育ができるよう、努力していきたいと思います。

独立行政法人国立病院機構 鹿児島医療センター
鹿児島市城山町8-1
☎099―223―1151(代表)
http://kagomc.jp/