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地方の医療は魅力的 人間力ある医師に成長できる

地方の医療は魅力的 人間力ある医師に成長できる

愛媛大学医学部附属病院腫瘍センター 薬師神 芳洋 センター長(やくしじん・よしひろ)
1988年愛媛大学医学部卒業、1993年同大学大学院博士課程卒業。
米ハーバード大学医学部ダナファーバー癌研究所、愛媛大学医学部講師などを経て、
2006年から現職。2012年から同大学医学部臨床腫瘍学講座教授兼任。

 四国4県で最も人口の多い愛媛県では、愛媛大学医学部附属病院を含む六つの地域がん診療連携拠点病院と、国立病院機構四国がんセンターによってがんの診療体制を整えている。同大学医学部附属病院腫瘍センター長の薬師神芳洋教授に、取り組みと課題を聞いた。

―腫瘍センターとは。

 愛媛県のがん医療水準を向上させるため、2006年に開設されました。主な役割は、院内各診療科のがん医療へのアドバイスとサポート、がん医療技術に関する情報提供、地域への啓発活動。合併症の多い患者さん、複数のがんを併発している患者さん、原発不明がんの患者さんの診療も引き受けています。

 2019年8月、京都大学医学部附属病院と連携して「がん遺伝子パネル検査」を開始しました。四国がんセンターに続き県内2カ所目です。

 院内がん医療のサポートでは、まず、主治医の先生が診断し、標準治療を施します。効果が出なかった場合、主治医から当センターに治療法の相談や共同診療の依頼がきます。主治医は各診療科の先生で、われわれはバックアップです。

―腫瘍センターの課題は。

 人材確保です。当センターのがん医療サポートシステムは、一定の役割を果たすことができています。しかし、本当はもっときめ細かに治療に介入していきたい。それを阻んでいるのがマンパワーの不足です。

 愛媛大学は毎年約100人の医師を輩出しますが、3分の2が都会の病院に流出します。残った3分の1が県内に分散するので、当教室でも毎年1人入局すればいいほうです。

 より多くの卒業生に県内に残ってもらうためには、都会と同レベルの高度な技術が身に付けられることをアピールすると同時に地方で取り組む医療の魅力を発信していく必要があります。

 都会と比べて地方の病院は患者の絶対数では劣りますが、一人ひとりの患者さんとじっくり向き合い、人生や生活にトータルで関わることが可能です。医師自身のプライベートを充実させることや濃密な人間関係の中で人としてのクオリティーを高めることもできると思っています。

―愛媛大学医学部臨床腫瘍学講座について。

 臨床系研究室として、実臨床に即した研究を行っています。

 例えば昨年発表した治療法と医療経済の研究。同じ効果を得られる二つの治療法があった場合、費用が安いほうがいいですから、本当に二つの治療法の効果が同じかを比較検討しました。また、抗がん剤と制吐剤の組み合わせ。どの組み合わせが一番有効で負担が少ないか調査して発表したこともあります。

 現在の抗がん剤治療は使用する薬の種類や量に高齢者と若い人の区別がなく、体力やダメージの程度による薬剤量の加減は主治医に任されていますが、それを自動的に決められるシステムができないかと取り組んでいる医師もいます。

 当教室では医学生も実習の一環で研究をしています。興味深かったのは、患者さんの社会的背景による生命予後の比較。がんの進行度や臓器能力で差が出るのは当然ですが、病院への通院時間によっても左右されることがデータではっきりと示されました。

 同じ治療を受けても通院時間が長いほど予後が悪いのです。遠いと病院に行きにくいという単純な受診機会の逸失や、地域の専門家の不在などが原因と考えられます。

 愛媛県の医療上の最大の課題は、通院のための交通手段や交通網の整備でしょう。東予や中予はさておき、南予や山間部には鉄道も高速道路もありません。へき地に医療をどう届けるか。行政の取り組みにも期待します。

愛媛大学医学部附属病院 腫瘍センター
愛媛県東温市志津川454
☎089―964―5111(代表)
https://www.m.ehime-u.ac.jp/hospital/cancer/

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