九州医事新報社 - 地域医療・医療経営専門新聞社

地域由来の研究継続し半世紀 脈々と精神受け継ぐ

地域由来の研究継続し半世紀 脈々と精神受け継ぐ

髙嶋 博 教授(たかしま・ひろし)
1990年鹿児島大学医学部卒業。国立療養所沖縄病院(現:国立病院
機構沖縄病院)、米ベイラー医科大学留学、鹿児島大学大学院医歯学
総合研究科神経病学講座神経内科・老年病学助教などを経て、2010年から現職。

 前身の第3内科から3人の教授が軸となって歴史を紡ぎ、2021年、開講50年の節目を迎えた。地域に根差した研究の実績も多数あり、患者の治療につなげている。開講以来、地域由来の研究を実現させてきた素地は何か―。10年から講座を率いる髙嶋博教授の言葉に耳を傾けた。

「治すための努力を」一貫した使命引き継ぐ
―開講時から現在まで受け継がれている精神は。

 当講座が開設された当時は、神経内科で扱うのはほとんど治療方法がない病気ばかりだったと聞き及んでいます。初代教授の井形昭弘先生は就任前、スモンという病気の原因究明に尽力され、キノホルムによる中毒が原因であることを突き止めました。 

 当講座は「患者を治すために努力することが大事だ」という井形先生のモットーの下、地域の病気の原因を一つずつ突き止め、治療につなげて解決することを使命にしています。この患者由来の研究(Patient orientedresearch)を行う基本姿勢は、今も変わらず引き継がれています。

 原因不明の病気や病名のない病気はまだ多くあります。これも井形先生の教えですが、テキストブックや論文に当てはまらない症状を訴える患者さんが2、3人いたら、「ただごとではない」と思うようにして、その背景を詳細に調べていくことを繰り返し実践してきました。

 原因を解明するためには、技術を身に付けることも大切です。当講座では大規模な次世代シークエンス解析やプログラムなどの新しい解析技術が登場したら積極的に取り入れ、独自に改良するようにしています。解明の過程ではさまざまな障壁もありますが、過去に先輩たちがやってきたように、解析力を上げながら新しく起こった問題をできるだけ早く解決するというスタンスはわれわれにも染み付いていると思っています。

 最近は臨床の負担が大きくなっており、研究と両立させるため、技能補佐員を多く雇用しています。医師が時間の確保をできない時でも、研究業務を補ってもらうようにしています。


地域由来の研究患者に還元を
―地域由来の研究で成果が出ている要因は。

 2019年、国内で初めてサルから人への感染が確認された「Bウイルス」という感染症を診断しました。患者さんを治療していたものの病名が分からなかったため、原因を調べることにしました。Bウイルスは日本では症例がない感染症でしたが、髄液からDNA配列を読み取り、特定することができました。

 これまで、前任の納光弘先生らが難病のHTLV1関連脊髄症(HAM)を発見して世界に発信した他、近年は脳脊髄炎患者の脳から見つかった「古細菌」が人に感染すると病気を引き起こすことなどを明らかにして、治療につなげてきました。どれも決して簡単ではなく、その時代時代で技術が追い付かなかったこともありましたが、泥くさく続けてきました。

 都市部などでは複数の病院に患者さんが散らばり、情報が一元化しにくい傾向がありますが、当院には南九州地域の関連病院の患者さんに関する情報が集約されます。鹿児島、南九州地域で固有の病気が多かったこともありますが、情報が集約される仕組みがあることが、地域由来の研究に着手する端緒をつかみ、研究を発展させ、患者さんに成果を還元することを可能にしている要因の一つではないかと思います。


―現在注力する研究は。

 遺伝性疾患については、難病のシャルコー・マリー・トゥース病の研究を長い間継続しています。最近は遺伝性疾患も治療薬の開発が進んでいるため、診断をより正確にするのも大事だと考えています。

 なかなか簡単なことではありませんが、遺伝性疾患の治療が一つでもわれわれにできればと思っています。自己免疫性脳炎の診断も、普通に診断できるようなレベルで普及するのが目標ですが、壁は高いです。


「出る杭を伸ばす」自由な発想を尊重
―教育面で重視していることは。

 さまざまな病気の解明に地道に取り組んでいることもあってか、例年多くの医局員が入局してくれており、2022年度は9人が入局する予定です。

 教育に関しては、「自らを高めて教育を行うこと」というのが医局員の心得としてあります。長く在籍しているスタッフを中心に、後進を熱心に指導してくれています。

 また、「出る杭(くい)伸ばす」という発想がこの講座の特徴だと思っています。発想が元々自由で、本に載っていない病態なども取り上げて議論したり、検討したりする雰囲気が醸成されています。フリーな議論の中でさまざまな可能性を探り、それに応じた検査を行っています。


諦めない姿勢50年、100年先も
ー講座の今後の未来図は。


 初代の井形先生、2代目の納先生から3代目を私が受け継ぎ、開設から50年が経過しました。前身の第3内科はかつて、「分からない、諦めない、治らない」の「3ない」と言われることもありましたが、今は治る病気が増えてきました。しかし、分からないものに対して決して諦めず、向き合っていく姿勢はずっと貫くことができていると思い
ます。

 こうしたスタンスを持続させて先輩方はさまざまな発見をし、50年間この流れは途切れずに続いています。今後もできる限り地域の患者由来の研究を続け、さらに治療開発が進められればと思っています。そして、それを担う人材をより多く育てることが何よりも肝要です。人材育成にも力を入れて、この先の50年、100年後の講座の発展につなげていきたいと考えています。



鹿児島大学大学院医歯学総合研究科 神経病学講座 脳神経内科・老年病学
鹿児島市桜ケ丘8─35─1  ☎099─275─5111(代表) https://www.kufm.kagoshima-u.ac.jp/~intmed3/

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