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地域医療支える自負置かれた状況で全力を

地域医療支える自負置かれた状況で全力を


院長(おおえだ・ただし)

1983年岡山大学医学部卒業、同泌尿器科学教室入局。独ギーセン大学客員研究員、
尾道市立市民病院副院長などを経て、2019年から現職。

 泌尿器のがんを主な専門とする大枝忠史氏。39歳のときに尾道市立市民病院に赴任して以来、「うちが尾道の地域医療を支える」との自負を胸に仕事と向き合ってきた。病院を取り巻く環境が変わり続ける中、今年4月に院長就任。抱負を聞く。

引き受けた理由は「何事も逃げない」

 人が優しい。海がきれい。魚がうまい。「お気に入り」の町で医師を務め、23年目。院内でがん治療の中心的役割を担い、前立腺肥大症では患者の身体的な負担が軽いレーザー治療を積極的に取り入れてきた。

 地道な医療活動に対する高い信頼はもちろん、病院内部を熟知する貴重な存在。それでも、院長就任を打診されたときは尻込みした。「ドクターをまとめる人間性も経営の力量も、あるとは思えませんでしたから」。真顔で謙遜する姿からは、飾らない人柄がにじむ。

 岡山大学泌尿器科学の那須保友教授に相談し、こう言われた。「『やりたい、やりたい』と言う者がなるより、『やりたくないんだけど』と言う者が就いた方がええ」。その真意は測りかねたが、「何事も逃げない」との自身の信条に立ち返り、引き受けた。

 病院を熟知しているからこそ、現実の厳しさを痛感する。地域の人口の減少、患者の減少、医師不足の深刻化。「僕がここでお世話になって以降で今が一番厳しい状況です。でも、嘆いていても始まらない。置かれた状況で何ができるか、全力で考えないと」

患者の利益と業務改善両立を

 院長就任に際し、厳しい状況を全職員に伝えた。「神風は吹きませんよ」と。医者は増えない、患者は増えない。そうした前提の下で、職員が誇りを持って働くためにはどうすればいいか。「やはり収益を上げることは、働くモチベーションを高める大きな要素になります」と強調する。

 病院の収支は、尾道市からの特別繰入金がなければ毎年度、赤字。改善を目指し、「まずは、やれることから」と着手したのが「診療報酬の請求漏れ」の防止だ。

 6月から本格的に取り組み、レセプトの分析ソフトも取り入れた。「きちんとした請求管理が業務全体の改善につながり、ひいては患者の利益にも結びつく。医事課の職員を含め、やる気を持って取り組んでくれています」と手応えを語る。

 地域医療構想の下で担う尾道市立市民病院の今後の役割をどう描くか。大枝院長は「うちは急性期を扱う病院だが、高度急性期とは言えない。ある意味、中途半端な病院」と分析する。「しかし、救急車の受け入れ台数の多さでも分かるように、尾道の地域医療をうちが支えているのは紛れもない事実。地方病院の医師確保は難しさを増しますが、まずはしっかりと今の診療体制の維持に努めながら、将来的な方向性も考えて動いていこうと思っています」

 医師を志したのは「たまたま」だという。親族に医師がいたわけでも、子どもの頃から「人助け」の使命感に燃えていたわけでもない。大学進学に際し、「難しいけど頑張ればなんとかなりそうな、ちょうどいい目標」と思い、医学部を受験した。

 進学後は、祖父が前立腺がんで亡くなったこともあり、泌尿器科に関心を寄せた。学位取得の研究テーマは「男性不妊」。不妊治療は今や高い注目を集める分野だが、当時は「マイナーな泌尿器科の中でも特にマイナー」だったという。「僕はもともとがマイナー志向。長いものに巻かれないことを好むんでしょう」

 高校、大学と続けたサッカーのポジションは、今で言うボランチ。「馬のような運動量」を生かし、守りにも攻めにも顔を出せる面白さがあった。病院トップとして攻守の要となった今、いろいろな人と対話しながら尾道の医療を支え続ける覚悟だ。

尾道市立総合医療センター 尾道市立市民病院
広島県尾道市新高山3-1170-177 ☎0848-47-1155(代表)
http://www.onomichi-hospital.jp/

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