九州医事新報社 - 医療・医学の〝今〟を伝えて62年

地域医療を維持するために震災からの病院再建

地域医療を維持するために震災からの病院再建

医療法人社団順幸会 阿蘇立野病院
上村 晋一 理事長・院長(うえむら・しんいち)
1990年久留米大学医学部卒業。済生会熊本病院、熊本大学医学部附属病院、
社会保険下関厚生病院(現:JCHO下関医療センター)などを経て、
2006年阿蘇立野病院院長、2014年から現職。

 熊本県南阿蘇村は、2016年4月の熊本地震で甚大な被害を受け、阿蘇立野病院も業務の停止を余儀なくされた。上村晋一理事長・院長は震災直後から病院再建に奔走し、ようやく2018年に全館再開を果たす。まだ課題は多いものの、次の目標に視線を向けている。

―地震発生から現在までの経過について。

 熊本地震発生後、当院はインフラの寸断や、裏山が土砂崩れする懸念などもあり、業務を断念せざるを得ませんでした。ただ、地震による建物や配管の損傷は、ほとんどなかったことから、その後の病院再建に際して、大きなアドバンテージになりました。

 本震発生から約2カ月後の2016年6月、関連法人である特別養護老人ホーム「陽ノ丘荘」の一角に診療所を設け、再建への第一歩を踏み出します。小さな診療所でしたが、職員の数は約30人。経営的には大変だったものの、彼らが再建後の病院で中核を担うと考え、決断しました。今振り返っても、この判断は正しかったと思います。

 病院を一部再開できたのは2017年4月です。村内外に避難していた立野の皆さんを送迎しながら、週1回の外来診療を始めました。そして同年8月、病院近くの橋が復旧。道路事情が格段に良くなり、私もがぜんやる気が出ました。

 以降は入院や救急の受け入れなどを順次進め、2018年1月に全館再開。ある患者さんから「先生が病院を再開してくれたおかげで、地元に戻る決心がついた」という言葉を聞いたときは本当に感激しました。

―現在の病院の様子はいかがでしょうか。

 入院ベッドは43床が稼働していますが、本来は88床あります。看護師が集まらないため、病床数を増やせていません。

 明るい話題もあります。2020年10月、地震の影響で一部不通となっていた国道57号線が全面開通しました。さらに、2021年3月には阿蘇大橋が復旧する予定です。これによって人の交流が活発になり、当院にも看護師を含め、多くの職員が集まることを期待しています。

 地域連携については、阿蘇南部地域の入院可能な病院として、熊本県から「地域在宅医療サポートセンター」に指定されています。当院が中心となり、地域の医療機関や介護施設との連携を強化することで、在宅医療を推進する取り組みが生まれています。

 私も、患者さんの自宅や介護施設に訪問診療する機会があります。実際に診療してみると非常に楽しいですね。地域に解け込むという意味でも、今後も訪問診療は重視していくつもりです。また、、病診連携も、より密にしていきたいと考えています。

―今後の取り組みは。

 現在、当院の病院理念は「ぬくもりと安心の医療を提供する職場であり病院でありたい」ですが、つい最近まで「職場」と「病院」の順番が逆でした。

 病院は職員がいることで、初めて患者さんを診ることができます。つまり、職員が働く職場が何よりも大切だと考え、理念を変更しました。今後はこれまで以上に地元の人々が安心して働ける職場、地域に信頼される職場を目指します。

 また、職員に対して「自主性」を促すことも重要です。病院側が何かを用意するのではなく、職員が病院や地域に貢献できることを考え、行動できるようになることを願っています。

 震災以降、多方面から数々の応援や励ましをいただきました。これからは、その「ご恩返し」をしていくつもりです。

 その一つとして、「令和2年7月豪雨」の際にJMAT(日本医師会災害医療チーム)の一員として参加しました。今後もできることから少しずつ、ご恩返しすることが当院の責務だと思っています。

医療法人社団順幸会 阿蘇立野病院
熊本県阿蘇郡南阿蘇村立野185―1
☎0967―68―0111(代表)
https://asotateno.or.jp/

この記事を読んだ方は他にこんな記事も読んでいます

最新の記事情報が取得できます

Twitter

「いいね!」ボタンを押すと、最新情報がすぐに確認できるようになります。

Instagram

フォローする」ボタンを押すと、最新情報がすぐにツイート上で確認できるようになります。

Instagram did not return a 200.

コメントはこちらから

[contact-form-7 404 "Not Found"]
メニューを閉じる