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地域一丸となって 心疾患に取り組む

地域一丸となって 心疾患に取り組む

和歌山県立医科大学
田中 篤 教授(たなか・あつし)
1990年大阪市立大学医学部卒業。馬場記念病院、
米ハーバード大学医学部マサチューセッツ総合病院、
和歌山県立医科大学循環器内科准教授などを経て、2021年から現職。


 和歌山県立医科大学循環器内科の教授に就任した田中篤氏は、県内における心疾患の死亡率を低下させるため、就任直後からさまざまな施策を行っている。「5年後には全国平均まで死亡率を是正したい」と、地域全体で心疾患に取り組む体制の構築を目指す。


最下位からの脱却

 和歌山県は以前から心疾患による死亡率が高く、2019年の調査では人口10万人当たりの割合で全国ワースト1位。田中氏は、この現状を少しずつでも改善しようと、就任直後に関連病院を含めた教室員の配置を見直した。

 「大学病院だけでなく、地域の中核病院と一緒に頑張らないと死亡率は低下しません。そこで各医療圏の医師数、各医師の専門性などを考慮しながら、派遣先や大学への帰還を調整。県内における循環器内科の医療体制をバランスよく整えることから始めました」

 また、07年に講師に就任以降、長年携わってきた経験も運営に大きく影響している。「教室員の特徴を以前から把握できていたこと、コミュニケーションを取りやすかったことで、結果的にスムーズかつ適正な人員配置ができたのではないでしょうか」と語る。

 もう一つ、最下位脱却に向けた動きが進んでいる。大学病院が中心となり、周辺にある五つの病院と心不全に関するチームを形成。急性期は大学病院が担い、その後は地域で、心臓リハビリテーションなどの運動療法が行える体制を整えた。今後はこのような枠組みを、県内の他の医療圏にも広める予定だ。


新たな研究を促す

 診療・研究体制にも改革を進めている。手始めとして各疾患別に、細かくチームを編成し、それぞれのリーダーに一定の権限を譲渡。研究面では、助教以上のメンバー全員に、新たなテーマを決めるよう促した。

 「循環器内科では珍しく、医用工学を得意とするメンバーがいるので、今後は独自性の高い研究成果が出ることを期待しています。基礎系に関しても、学内連携によって新たな研究を開始しています」。診療科同士の連携も強化しつつある。以前から救急科、心臓血管外科などとは密にコミュニケーションを図っており、現在は、糖尿病内科、膠原病内科とも患者の紹介などで連携を構築している。

 21年9月からは新たに「失神外来」を開設。他の診療科と協力しながら対応に当たっている。「心疾患の死亡率を下げるためにも、失神外来の意義は大きいのではないかと思います」


パイロット方式の育成方針を採用

 人材育成についての基本方針は「パイロット育成方式」だ。

 戦闘機の世界では、最も優秀なエースパイロットが教官となり、若手とバディーを組んで編隊飛行しながら指導するという。循環器内科医にも同じような教育が必要だと感じ、教室のエースを講師役に据え、彼らが若手をマンツーマンで育成している。

 「この指導法は、エースパイロットがいないと成り立ちません。幸い、当教室には、私が直接育て、私と同じ思いを持ち、実力的にも人間的にも信頼を置ける優秀なメンバーが多数いますので、安心して任せています」

 自身は、医師としてのポリシーである「全ては患者さんのため」を後進に伝えている。例えば、「胸が痛い」と病院に来た患者に対し、一通り検査しても原因が分からなかった場合、それで診療を終えてしまう若手がよくいる。しかし、痛みの原因を最後まで突き詰めるように指導している。

 「患者さんのことを考えず、自分の都合を優先したり、自分が知らない領域だからと途中で放り出したりすることがないよう、常に指導しています。新たな研究につなげるためにも、この信念を伝え続けます」


和歌山県立医科大学
和歌山市紀三井寺811-1 ☎073-447-2300(代表)
http://www.wakayama-med.ac.jp/med/junnai/

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