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地域をつなげ「よりよく生きる」を支える

地域をつなげ「よりよく生きる」を支える

医療法人   理事長・院長(やづ・つよし)
1984年長崎大学医学部卒業、九州大学第3内科入局。
北九州市立小倉病院(現:北九州市立医療センター)
国立福岡中央病院(現:国立病院機構九州医療センター)
九州大学医学部附属病院(現:九州大学病院)などを経て、1996年から現職。

 開院以来、在宅医療や在宅での緩和ケアに取り組んできた矢津内科消化器科クリニック。行橋市を含む京築医療圏でも高齢化は着実に進み、高齢化率は全国平均を超える。福岡県医師会地域包括ケアシステム構築検討委員会委員長を務める矢津剛理事長・院長に、地域の現状に対する思いを聞いた。

―在宅医療に関わって20年ほど。地域医療をどのようにご覧になっていますか。

 当クリニックが開業した当時、地域に在宅での緩和ケアや在宅ホスピスに対応できる開業医の先生はいませんでした。患者さんの中には、北九州市まで通って緩和医療を受ける方も少なくなかったのです。「自宅で最期を迎えたい」と望む声に応えようと、在宅医療をスタートしました。これまで1000人を超える方の看取(みと)りに関わってきました。

 20数年前の状況と比較すると、2000年に介護保険制度が始まったこと、患者やその家族が高齢化したこと。また、急性期病院での入院日数が短くなり、その後のケアは療養型の医療施設などに委ねる動きが広がってきたという変化があります。 福岡県内の介護施設が増加したことで、在宅で亡くなる方の割合は少しずつ高まってきています。

 しかし、地域ごとの差があるのも事実です。老老世帯や高齢者の単身世帯が増えているが、それを支えるためのサービスが十分に整備されていない地域もあります。ある面では、在宅医療が難しくなっているとも言えるでしょう。

―どのような取り組みが求められていますか。

 医師同士の連携、多職種間の連携の強化です。当院は、京都(みやこ)医師会が進める在宅医療介護において連携支援センターの役割を担っています。また、緩和ケアネットワークの代表幹事として、研修会を開催したり、開業医や介護施設などを対象にした在宅ホスピスフェスタを開催したりしています。

 厚生労働省は、昨年11月にアドバンス・ケア・プランニングの愛称を「人生会議」と決定しました。この「会議」は、最期を迎えたときに誰がどのように行動すべきか、本人や家族、医療者らが話し合うことで、できるだけ望む方向に導いていくためのものです。

 もちろん本人の気持ちの移り変わりに伴って、方針は改めて決めたらいいのです。医療者や介護に携わる関係者が、その時点の考え方を共有しておくことが大切です。その人の望む生活をどうしたら支えることができるのか、しっかりと考えていくのが今後の医療の中心になると思います。

 多職種間における情報共有を円滑にするために、福岡県医師会は医療情報ネットワーク「とびうめネット」をスタートしました。京都医師会でも、インターネット上で医師同士が連携するための仕組みを取り入れ、休診時の対応などで助け合う試みが動き始めています。限られた医療資源を活用して、多職種の連携が力を発揮できるよう後押ししています。

―今後は。

 10年ほど前にレスパイトケアを目的とした「ひと息の村」という施設を開設しました。神経難病の方や人工呼吸器を装着している方、末期のがんでさまざまな合併症がある方を対象に、デイサービスや入浴サービスなどを提供します。小児から高齢者の方まで、在宅医療を支える訪問看護ステーションや緩和ケアサロンも併設しています。

 緩和ケアの対象としているのはがん患者だけではありません。心不全や慢性の呼吸器疾患、認知症患者も受け入れています。重度心身障害児を対象とした緩和ケアや在宅医療にも取り組んでいます。精神的な支援も含めて患者さんが「よりよく生きる」ために医療や介護、福祉が一体となって支えることが、ますます重視されていくと考えています。

医療法人 矢津内科消化器科クリニック
福岡県行橋市行事7─19─6
☎0930─22─2524(代表)
http://www.yazz-clinic.jp/

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