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地域や多職種連携による小児在宅医療の実現へ

地域や多職種連携による小児在宅医療の実現へ

産業医科大学医学部 小児科学 楠原 浩一 教授 (くすはら・こういち)
1983年九州大学医学部卒業。
福岡市立こども病院・感染症センター、米バンダービルト大学医学部、
九州大学大学院医学研究院成長発達医学分野(小児科)准教授などを経て、2009年から現職。

産業医科大学医学部 小児科学  荒木 俊介 NICU室長(あらき・しゅんすけ)
2001年産業医科大学医学部卒業、2008年同大学院卒業。
産業医科大学病院小児科、同総合周産期母子医療センター、
埼玉医科大学総合医療センター・総合周産期母子医療センターなどを経て、2016年から現職。

 開講以来、高度医療を提供し、地域に貢献してきた産業医科大学小児科。総合周産期母子医療センターを有し、新生児医療の最先端を担う存在でもある。患者と家族の未来を見据えた、小児医療のあるべき姿とは。

―産業医科大学小児科の特徴、地域での役割とは。

楠原 浩一 教授

楠原浩一教授(以下:教授) 得意分野は、感染症・免疫、血液・腫瘍、血友病、新生児、内分泌、そして神経です。血液疾患の中で血友病については、九州における診療の拠点になっています。

 特徴は三つ挙げられます。一つ目は、大学の在籍者が約20人と小児科教室としては比較的小規模であるため、それぞれの教員が最も得意とする専門分野に加え、もう一つ専門分野を持つことで、幅広い診療を行っていることです。

荒木俊介NICU室長(以下:室長) 私は、内分泌と新生児が専門。現在は、新生児部門のチーフを担当しています。

教授 荒木先生も、もともとは内分泌が第一専門分野でしたが、今は新生児をお願いしています。小児病床に占める新生児部門の割合が約45%と他の大学病院に比べて高いため、全身管理に長けた医師が多い。これが二つ目の特徴です。三つ目は、小規模ゆえに心理的な距離が近く、教室の一体感が強いということです。

室長 現状として、地域の小児科では、産業医科大学病院が、最後の砦(とりで)だと思っています。

教授 3次医療機関としての役割をしっかり果たしていくことが大切です。血液・腫瘍、感染症・免疫、リウマチ・膠原病(こうげんびょう)などは、北九州市内に専門家が少なく、北九州一円から患者さんが紹介されてきます。紹介を受けるだけでなく、医師同士のコンサルテーションも今後は重要になってくるでしょう。

―現在、教室全体で力を入れている取り組みについて。

荒木 俊介 NICU室長

教授 在宅医療に力を入れています。

室長 まずは環境を整えるために、ソーシャルワーカーや訪問看護師、地域の医療機関などの多職種連携が重要だと感じています。当院のみで30人以上、医療圏としては200人近くの医療的ケアを必要とする子どもたちがいます。小児科以外の地域の医師にも協力いただき、感冒や予防接種などの1次ケアを担ってもらえないかと考え、昨年から「小児医療講習会、講演会」も開催しています。

教授 早産や低出生体重、新生児仮死による脳障害などにより長期入院をせざるをえない小児の患者さんは少なくありません。そのような患者さんであっても、なるべく自宅で家族と一緒に過ごせるようになってほしい。第一は患者さんのためですが、病院としても、在宅医療に切り替えることで、より高度な治療を必要とする急性期の患者さんを受け入れられる体制がとれると考えています。

室長 自宅で世話をする家族への支援も重視し、NICUを退院した子どもの保護者が定期的に集まる会、家族がケアを休めるレスパイトケアなども行っています。赤ちゃんがNICUに入院している時から家族が育児に関わる「ファミリーセンタードケア」も実施しています。

 子どもが生まれただけで家族になれるわけではない。ケアして初めて家族になれると思っていますので、医療の面だけを考えて入院を長引かせるのではなく、サポートしながらご自宅でご家族の時間をつくっていきたいと思っています。

教授 4年後、新病棟に総合周産期母子医療センターが移転する際、入院中の患者さんの家族が退院前に長時間自宅のように過ごせる「ファミリールーム」を設置。これは荒木先生の発案。今から楽しみですね。

―今後の目標は。

教授 小児科の責任者としては、診療・教育に加えて研究を充実させ、働き方改革にも対応するため、教室員を増やすことが一番の目標です。小児科は、専門性を持ちながらさまざまな疾患の診療ができます。その魅力を若い人たちに伝えていければと思います。

室長 患者本人のみならず、社会的、経済的に困難なご家族のフォロー、終末期患者の保護者への支援、介護を行う保護者の就労問題などにも関わっていきたいと思っています。北九州市では、医療や福祉、行政が一緒になった協議会をつくる動きがあります。できれば家族もメンバーに加えて、実現できればいいですね。

産業医科大学 小児科学教室
福岡県北九州市八幡西区医生ケ丘1─1
☎093―603―1611(代表)
https://www.uoeh-u.ac.jp/kouza/syonika/


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