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地域へ貢献するために まずは自分から動く

地域へ貢献するために まずは自分から動く

菊川市立総合病院
松本 有司 院長(まつもと・ゆうじ)

1986年信州大学医学部卒業。
浜松医科大学医学部附属病院第三内科、
県西部浜松医療センター(現:浜松医療センター)、
菊川市立総合病院副院長などを経て、2019年から現職。

 就任から約半年。病院運営で大事にしたいのは「組織文化」だと語る。「目に見えるものは大事。でも見えないものも、それ以上に大事だと思っています」。病院の存在意義を共有し、職員が共に高め合う風土にしたい、と願う。

いつもそばにいるもう一人の自分

 10歳の少年の目に焼き付いているのは、病室の外に広がる景色。病に伏せる父親を直視できず、窓の外をずっと眺めていた。発見が早ければ、救えたはずの命—。肉親を亡くした記憶が成長するにつれ、じわじわとよみがえってくる。「それが医師になろうと思ったきっかけかもしれません」

 われを忘れて熱中するタイプではないと自己分析する。「話をしているときも、もう一人の自分が斜め上から観察している感じ。一歩引いて考える癖は、今も変わりません」。組織のトップとして、勝手な思い込みはないか、固定観念に縛られてはないか—。自問しているという。

地域に貢献するために

 運営の方向性は大きく二つ。地域密着を推し進めること、医療者に選ばれる病院にすることだ。

 もともと、精神科60床と急性期210床で構成されていた病院。この10年で急性期病棟の一部を回復期リハ病棟と地域包括ケア病棟に改修。治し、支える機能を持つケアミックス病院へと変貌した。

 地域包括ケア病棟は現在、急性期のバックアップ機能が7割を占める。今後は地域からの受け入れをより強化するつもりだ。「患者さんが笑顔になって、人としての尊厳を取り戻す場所になればと思っています」

 特徴的なのが、家庭医の養成だ。「菊川市の人口10万人当たり医師数は全国平均を大きく下回る。診療科の枠を越えて対応する家庭医は、地域医療の大きな担い手なのです」

 他病院とも協働し「静岡家庭医養成プログラム」を立ち上げて10年目。現在、病院や家庭医療センターなどで指導医10人の下、11人が研修に励んでいる。これまで専門医を取得した16人のうち、地域に残ったのは7人。より定着してもらうには「地域に愛着を持ってもらうこと」。自分たちの医療を地域ぐるみで守ろうと住民に働きかけることも病院の役割と語る。

 地域に貢献したいという気持ちは職員も同じだ。「例えばリハスタッフには、退院後の患者さんとも関わりたい、地域に埋もれているフレイルの方を掘り起こして自立に導きたいという気持ちがあることが分かった。行政には、うちが協力できることがあれば言ってほしいと伝えたところです。地域のためになる、あるいは職員が成長できることなら、病院の境界を飛び越えたっていい」。それが一歩先の地域密着を推し進め、さらに医療者が根付く地域づくりにもつながる、と語る。

現場の声を聴き勇気を持って実行

 院長になって始めた部署訪問では他にも、さまざまな意見や要望が上がった。理想は、職員が当事者意識を持って経営に関わること。それを実現するカギが「現場志向型マネジメント」だと話す。「現場の直感や共感を大切にする。それらを拾い上げて、形にして行動に移すことです」

 そのためには、一人ひとりが相手を受け入れ語り合える場の雰囲気が必要だ。「共通の思いにたどり着くためには、リーダーのサポートが必要。まずは自分が動き回る覚悟です」

 変動的で不確実、複雑で曖昧、いわゆる「VUCAの時代」だと語る。「トップダウンではなく、分からないことを謙虚に認め、現場に足を運び、教えてもらう。共感できるものがあれば、一気に行動に移す。それが肝心。今の私に必要なのは、謙虚さと行動力、そして勇気。忘れずにやっていきたいと思っています」

菊川市立総合病院
静岡県菊川市東横地1632 ☎0537—35—2135(代表)
https://www.kikugawa-hosp.jp/

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