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地域の救急医療体制を「チーム関門」で支える

地域の救急医療体制を「チーム関門」で支える

独立行政法人国立病院機構 関門医療センター
佐藤 穣 副院長・救命救急センター長(さとう・ゆたか)

1983年山口大学医学部卒業。
米スクリプス研究所研究員、山口大学医学部附属病院、関門医療センター総合診療部長などを経て、
2015年から現職。山口大学医学部臨床教授。

 2011年に救命救急センター長、2015年には副院長に就任。2019年9月には、山口県救急医療功労者として知事表彰を受けた。下関・長門地区の救急医療と救命救急センターの現状、今後の課題を聞いた。

―救急医療の現状は。

 救急医の引き揚げに伴い、当時、統括診療部長、総合診療部長だった私が救命救急センター長に任命されました。実は、内科救急の経験しかなく、自分が講習に行くところからのスタートでした。

 当院の救命救急センター長は下関・長門地域のメディカルコントロール(MC)協議会会長を兼任しており、消防を含めた地域の救急体制全てを束ねる立場。就任当時、救急は市内の病院で輪番制でしたが、救急担当者が誰かもお互いに分からない状態でした。

 消防局警防課の提案で、当院を含めた市内4病院(下関医療センター、下関市立市民病院、山口県済生会下関総合病院)の救急担当ドクターと下関市保健部で会合を開き、救急医療体制について議論を続けました。その結果、効率的な輪番制と密な連携体制「チーム関門」が実現し、救急車受け入れ率98%という全国でも高い実績を残しています。

 MC協議会会長としては救急隊の教育も担当しており、定期的な救急症例検討会の開催や救急活動訓練の指導をしています。また、日頃から、搬送を担当した救急隊長には患者さんの診断がつき次第、電話を入れてフォローしています。

 市の保健部が救急医療のコーディネートに関与し、円滑な救急医療の推進や連携を支援しているのも、全国的に珍しいことです。

 今回の受賞は、この「チーム関門」への表彰であり、さらに救急医療の質的向上を目指せという激励だと受け止めています。

―救命救急センターについて。

 「救命救急センターER24」は、24時間365日ウオークインや救急搬送の患者さんに対応可能。ドクターヘリはもちろん、海上保安庁や自衛隊のヘリも受け入れられる大型ヘリポートがあります。年間受診者数は8000人以上、年間救急搬送数は3000台以上。とにかく「断らないこと」がミッションです。

 初期診療は救急担当医と研修医が行い、それぞれの専門科が「チーム関門医療センター」として対応。身体疾患がある精神科の患者さんなども幅広く受け入れています。

 今の救急医療は高齢者医療です。患者さんの全体を診て、どういう病態にすぐアプローチしなくてはならないのかを見極める能力が必要であり、救急医療とは総合診療であるとも言えます。リハビリや栄養、福祉など多職種の連携は必須で、在宅復帰に向けて早期から対処する仕組みをつくっています。

─今後の課題は。

 医師の臨床研修が必修化されて以来、15年間で209人の研修医が「卒業」しました。研修医は1年目から総合外来を担当し、2年間の「副直」研修として救急に従事することが必須です。ERでは研修医が初期対応を行い、われわれがバックアップします。研修医は診断推論を徹底的に学び、総合診療マインドを培います。また、多職種が研修に関わり、チーム医療の大切さも学びます。ERは研修医にとっても大切な場です。

 この地域の救急医療が崩壊することはないと思います。ただ、医師不足や医師の高齢化は深刻な問題です。病院としては、さらに多職種の連携を強めて、患者さんの退院後、地域包括ケアまで含めて考えていく必要があります。

 スタッフには「自分の年老いた両親を入院させたい病院であるか」を考えるようにと話しています。「One for all, all for one」の精神で、仲間を大切に、プロフェッショナリズムを磨いてほしいと思います。


山口県下関市長府外浦町1―1
☎083―241―1199(代表)
https://kanmon.hosp.go.jp/

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