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地域の医療の灯を絶やさないために

地域の医療の灯を絶やさないために


理事長(たにうら・ひろゆき)
1983年島根医科医学部大学卒業。島根医科大学附属病院、千代田中央病院、
六日市病院病院長を経て、2019年から現職。

 運営母体の撤退に伴って2人の常勤医が離職すると共に、理事長の交代という激震を体験した島根県の中山間地にある社会医療法人石州会六日市病院。病院長から理事長に就任した谷浦博之氏に今心を砕いていること、そして地域医療の可能性について聞いた。

病院の存続に向け覚悟を決める

 島根県の最南端に位置する鹿足郡吉賀町。かつては宿場町として栄えた人口6千人超のこの町に病院は一つしかない。その六日市病院に23年勤務した谷浦理事長にとって、今回の出来事は全くの想定外だった。

 「還暦を過ぎて子どもたちも巣立ったので、これからはワークライフバランスで言うライフを充実させようと考えていたところでした。葛藤はありましたが、これはもう自らの天命なのだと考え、理事長を引き受けることにしました」

 病院機能をどうしたら残せるのか。この数カ月、町や県と話し合う機会を設けてきた。

 「やると決めた以上は覚悟を決めて動き出しました。と言っても、病院単体で動けるものでもありませんし、行政とも折衝をしています。公立病院にしようにも町の財政に余裕はない。今もどのように持続させられるか模索中です」

 理事長就任後は、職員や地域住民の動揺を抑えることに心血を注いだ。

「今回の件が明らかになった2019年3月の時点で、ネガティブなイメージが広がり、それがボディーブローのように効いています。今後のビジョンを描いて一人でも多くの医療従事者を集結させ、立て直しを図る。今はそれだけです」

救急機能を残すには経営の安定が必須

 救急医療を残すことに強い使命感を持っている。

 「ここは益田にも広島にも山口にも1時間半という場所にあります。ここで全てができなくても、ある程度の処置ができるだけでかなり違います」

 ただし、救急機能を残すためにはマンパワーが必要だ。「マンパワーを集めるために、まずは経営の安定を図りたいと思っています。病院の存続できれば人が集まり、町の企業誘致や移住者の促進にもつながっていくと思います」

 谷浦理事長はこういった問題は今後、日本のさまざまなところで起きる可能性があると指摘する。

 「学校や警察、消防の職員を、組織の長が探し回ることはありません。でも、病院ではそれが必要なのです。ぎりぎりの人数で回している地域医療は、1人2人の離職で簡単に崩壊します。それを食い止め、人を集めることは、私の役割と認識しています」

信頼関係を大切にこの地の医療を守る

 地域医療には、医療従事者を惹きつけてやまない魅力もある。

 「医者は、患者さんと信頼関係を構築できることが一番のやりがいだと私は思っています。地方では、それがより濃くなる印象があります。患者さんひとりひとりと向き合い、付き合いが長くなればなるほど、全幅の信頼を寄せていただけていることを肌で感じます」
 だからこそ、ごまかさずに責任を持ってやり切ることが大切だ。

 「医師という職業を選んだのも、この病院で働くことを選んだのも自分。投げ出すわけにはいきません。そして、嘘はつかない。一度でも嘘をついてしまったら、患者さんとの信頼関係が壊れてしまいます」

 谷浦理事長は未来を見据える。

 「将来、診療所という形になっても救急は続けたいと考えています。この町が故郷である医師の卵や、こちらでセカンドキャリアを歩みたいと言ってくれる医師を揃えて、必ずこの地域の医療を守っていきたいと思います」

社会医療法人石州会 六日市病院
島根県鹿足郡吉賀町六日市368―4 ☎0856―77―1581(代表)
http://www.sekisyukai.or.jp/

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