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地域に求められるのは総合力を持つ産婦人科医

地域に求められるのは総合力を持つ産婦人科医

金沢大学医薬保健研究域医学系   教授(ふじわら・ひろし)
1983年京都大学医学部卒業。日本赤十字社和歌山医療センター産婦人科、
京都大学大学院医学研究科准教授などを経て、2013年から現職。

 1885年に誕生した金沢大学の産科婦人科学教室。134年の歴史ある教室として「北陸全体を見ていく立場でもある」と12代目の藤原浩教授。地域に根差した産婦人科医の養成に力を注ぐ。

―産婦人科医療の現状は。

 かつて北陸には医学部が金沢大学しかありませんでしたので、本学は福井県、富山県まで地域全体を一手に引き受けるという時代がありました。その名残からでしょう。産科婦人科学教室の関連病院は今も北陸全体に広がっています。

 教室員の3分の2以上が北陸以外の出身で占められているのも特徴でしょう。逆に本学出身者だけではないので、風通し良く、また教室の良い点などを客観的に捉えてくれていると思います。

 地方の場合、医師不足、特に産婦人科医の不足は厳しさを増しています。

 2022年度末には北陸新幹線の金沢、敦賀間が開業予定で、金沢市は首都圏や関西圏とのアクセスがより容易になります。患者さんの流失のみならず医師の流失、ひいては医療過疎にもなりかねないと危惧しています。

 また、石川県の特徴として、昔から産婦人科医院がお産を担うというケースが少なくありません。能登半島などもあってエリアが広く集約化が難しかったこともあるでしょう。現在も一般病院であっても多くて産婦人科医師2人程度。しかも、現状では医師の高齢化が進んでいます。ローリスクのお産ではありますが、60歳以上の医師が年間数千件のお産に対応しているというデータもあります。

 もちろんそういうベテランの産婦人科医は、経験豊富ですのであらゆるお産に対応できます。しかし、5年、10年後に地域で核となって分娩を支える次の世代の医師が育っていないのが実情です。

 2014年の厚労科研費の研究では、10年後の分娩施設の医師数の増減を試算した数値が示されました。

 それによると石川県は10%以上医師数が低下すると推測される自治体の一つでした。これを防ぐためには東京や大阪に負けない研修システムを構築していく必要があると考えています。

―育成する医師像は。

 産科、婦人科をバランスよく担っていける総合的な力を持つ産婦人科医です。

 東京であれば、婦人科、腫瘍、周産期などとそれぞれが専門分野に分かれていても病院の運営は可能でしょう。しかし、地方の基幹病院ではそれだけではなく、お産もできるけれども、ある程度全体も理解しているような医師が必要とされています。

 地域によっては、分娩数が年間約100件というところもありますが、地域の医療体制を守ることは私たち大学医学部の使命の一つです。その地方にとって必要な医師像というものがありますので、それに応えられる医師を育てなければなりません。

 また、内視鏡手術についても力を入れています。産科救急への対応レベルを全体的に向上するため、産科担当医にも婦人科での腹腔鏡による悪性腫瘍の手術に参加する教育プログラムを作成。術者の手術中の画像を録画し、振り返りながら、より正確な手技や効率的な進行方法を学びます。手術のビデオ画像は多数ありますので、勉強したいと思えばいくらでも学べる環境をつくっています。

 産婦人科医の魅力は、卵から周産期、思春期、腫瘍、更年期と、生命の誕生から次世代への継承まで人の一生にわたって携われることではないでしょうか。特に当教室は、バランスを大事にしています。

 私が教授に就任後は、認定医、専門医の取得も増えて各分野満遍なくそろいました。指導者の立場の医師も「北陸の医療は自分たちが守る」という気概を持って指導に当たってくれていますので、これからが楽しみです。

金沢大学医薬保健研究域医学系 産科婦人科学教室
金沢市宝町13―1
☎076―265―2000(代表)
http://obgyn.w3.kanazawa-u.ac.jp/

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