九州医事新報社 - 医療・医学の〝今〟を伝えて62年

地域と連携し自殺未遂者の体と心の回復を目指す

地域と連携し自殺未遂者の体と心の回復を目指す

宮崎大学医学部 臨床神経科学講座 精神医学分野
講師(みよし・りょうえい)

2005年宮崎大学医学部卒業、2007年同精神科入局。
宮崎大学医学部附属病院卒後臨床研修センター助教などを経て、2018年から現職。

 病院で治療を受ける患者の中には、体が回復しても精神面での回復が遅れる人がいる。中でも自殺未遂で救急に運ばれてくる患者は、なかなか心の回復が伴わず、精神科と協力しての治療となる。精神的な問題を抱える患者の体と心の回復にどう取り組むべきか、宮崎大学臨床神経科学講座の三好良英講師に話を聞いた。

―特徴は。

 宮崎大学精神科では、「身体合併症を有する精神障害者への専門的対応」を診療方針としています。精神障害をお持ちの患者さんが、例えばがんなどの手術を受けられたりするとき、関係する診療科と私たち精神科の医師が連携して治療に取り組みます。

 また、病院内で治療されている患者さんに、「せん妄」などの精神的に不安定な症状が見られた場合には、精神科の医師が治療に参加することになります。

 身体合併症を有する精神疾患患者に対する医療提供については、2012年度の診療報酬改定で精神科リエゾンチーム加算、2016年度では精神科急性期医師配置加算が設定されました。この改定もあり、宮崎大学でも2016年に体制を見直し、精神科医、精神科看護師、精神保健福祉士、心理士など多職種で構成される精神科リエゾンチームの活動を始めました。

 しかし、宮崎大学医学部附属病院を含め、救急と精神科を持つ医療機関は、宮崎県内では数えるほどしかありません。身体的な疾患と精神的な疾患を一緒に診ることができる環境が、宮崎県内では限られていると言えます。

―地域との連携は。

 宮崎県は、自殺者が非常に多いという課題を長年にわたり抱えています。2007年から2018年の統計だけみても、人口10万人当たりの自殺者数が全国平均を一貫して上回っており、ほぼ全国ワースト10圏内を記録。一度だけ圏外に出ましたが、それもワースト11位という結果でした。

 救急で運ばれてくる自殺未遂の患者さんは、救命救急センターに入院中から、私たち精神科のチームが精神科的な治療やサポートを行います。身体的なダメージが治った後も、必要な方は精神科病棟で治療を継続しています。自殺未遂の方は自殺を繰り返す傾向があり、再企図による自殺既遂を予防する点からも精神科のフォローは大切です。

 一方で、自殺の現場に関わる消防や警察の方を含む病院前救急の現場のスタッフは、その初期対応に悩まれることが少なくありません。そこで、県福祉保健課、県内各地域の保健所と協力して、自殺企図者の初期対応のための勉強会を実施しています。勉強会では、日本臨床救急医学会が作成した標準的な初期診療のための研修コースである「PEECコース」を活用し、精神科医がいない状況でどのように患者に対応するかを伝えています。

 今年は宮崎、都城、小林、日南、延岡、高千穂の各所で勉強会を実施、または予定しています。各保健所の管轄内の救急医、精神科医、看護師、保健師、救急隊員、心理士、ソーシャルワーカーなど多数が参加しています。

 自殺未遂患者の初期対応をする救急隊員や警察からは、救急科も精神科も診られる病院が県内に少ないこともあり、「医療機関と連携ができていない」という声を多く聞きます。勉強会や研修会が、少しでも役に立つことを願っています。

 自殺未遂の患者が減ることは、簡単ではありません。しかし「からだ」と「こころ」の病気を一緒に治療することで、自殺未遂をした方が、一人でも再企図を思いとどまって、人生の再スタートが切れることを願うばかりです。

 一度は死を考えた方が、外来で治療を続ける中で、「結婚したよ」「就職したよ」と新しい人生を歩んでいる姿を見ることは、本当にうれしいことです。


宮崎市清武町木原5200
☎0985―85―1510(代表)
http://www.med.miyazaki-u.ac.jp/psychiatry/

この記事を読んだ方は他にこんな記事も読んでいます

最新の記事情報が取得できます

Twitter

「いいね!」ボタンを押すと、最新情報がすぐに確認できるようになります。

Instagram

フォローする」ボタンを押すと、最新情報がすぐにツイート上で確認できるようになります。

Instagram did not return a 200.

コメントはこちらから

メニューを閉じる