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地域で全体最適化された医療の提供を目指して

地域で全体最適化された医療の提供を目指して


理事長(たかはし・かんじ)

1989年山口大学医学部卒業。
同神経精神科、山口県立中央病院(現:山口県立総合医療センター)神経科などを経て、
1996年医療法人和同会片倉病院院長。2008年から現職。院長兼任。

 宇部市、山口市、防府市の山口県央部と広島市で医療法人と社会福祉法人を展開する和同会グループは、地域のニーズを意識しながら、信頼される医療・福祉の提供を目指している。近年は、超高齢社会を背景に、地域における全体最適化された医療システムの実現に向けた準備も進めている。

―「全体最適化された医療の提供」とは。

 日本の急激な人口減少と少子化を伴った超高齢社会においては、従来の治す医療から「治し支える医療」、さらには、そもそも病気にならないための「予防法の確立」など、医療・福祉におけるパラダイムシフトが求められています。

 こういった課題を解決するため「全体最適」という視点が重要です。構造・機能面では地域包括ケアシステム構築、そのための地域医療構想調整会議、オンライン診療の制度化などで、まさにこれらは全体最適で行っています。

 しかし効率性・実効性の面からは医療デバイスの進化に利用法や価格低下が追い付かず、運用できないことが多かったり、呼吸器疾患関連の介入が山口県では弱かったりといった要改善点があります。

 そこで和同会では、地域の医療機関をはじめ、医師会や行政と連携し、地域の高齢者を包括的に支え健康増進を図る「呼吸器・地域包括ケアシステム」の構築の提案を計画しています。

―具体的には。

 現在、がん、心疾患、脳卒中が死亡の主因ですが、最終的には肺炎でも同様に多くの方が亡くなっています。肺炎に限らず、呼吸器疾患は高齢者の生活の質を低下させるため、予防や適切なケアが大切です。しかし山口県は呼吸器内科専門医の絶対数不足などにより対応が十分とは言えない状況です。そこで山口大学医学部に寄附講座を申請し、今年4月に呼吸器・健康長寿学講座を開設。肺炎予防に焦点を当てた診療と研究が始まりました。

 具体的な取り組みは大きく二つ。ビッグデータを用いた肺炎のリスク因子の解析と肺炎予防への具体的な介入です。肺炎予防については、今年4月から山口大学呼吸器・感染症内科の非常勤医師2人、歯科口腔外科医師2人、歯科衛生士らによる肺炎予防外来を開始しました。基礎疾患の適切なコントロールやワクチン接種など、実効性のある予防策を実施しています。

 また、口腔内の細菌の減少は肺炎の発症を抑制し、肺炎による死亡率を減少させるとの報告があることから、オーラルケアの啓発活動も行っています。高齢者の誤嚥(ごえん)性肺炎対策として、摂食・嚥下機能向上に体操などで介入するほか、予防・再発防止のための呼吸器リハも強化しています。

 こうした取り組みを始めて半年が過ぎ、2〜5年の実績を見なければ厳密に効果を語れませんが、高齢者施設から肺炎で入院する比率は減少傾向にあります。

―今後の展望は。

 健康長寿社会の実現に向けて、現在、グループ病院の一つでメディカルフィットネスを運営しています。医師などから医学的なアドバイスを受け、健康増進・介護予防などが行える運動施設です。将来的にはすべての病院に併設したいと考えています。

 以前より24時間365日の安心・安全確保の体制を整えるため、他の業界とのタスクシェアのような形で特定看護師やケースワーカーが駐在する小さな拠点づくりを起案してきました。しかし、コンビニの24時間営業も困難になりつつある今、難渋しているのが現状です。

 変化の激しい現代社会では、ターゲティングを間違えると運用できても時代に合わず、労力や投資が無駄になってしまうので気を付けなければなりません。

 社会の動きに柔軟に対応しながら、より効率的な医療システムを構築し、地域の健康長寿に貢献したいと考えています。

医療法人和同会
山口県宇部市西岐波229─3(片倉病院)
☎0836─51─6222(代表)
http://www.wadokai.or.jp/

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