一般社団法人 天草郡市医師会立 天草地域医療センター
原田 和則 院長(はらだ・かずのり)
1975年熊本大学医学部卒業。同第二外科(現:消化器外科学)医局長、
天草郡市医師会立天草地域医療センター副院長などを経て、2012年から現職。
熊本大学医学部臨床教授。
天草地域医療センターは医師会立の病院。「地域医療実践教育天草拠点」として2年弱が経過し、医師育成の成果が出始めた。地域完結型医療を推進してきた原田和則院長に、現状や今後の展望などを聞いた。
─地域医療実践教育拠点と、熊本県地域医療連携ネットワーク構想の現状は。
熊本大学の「地域医療・総合診療実践学寄附講座」の教育拠点として、2019年4月、当センターに「地域医療実践教育天草拠点」が開設されました。
地域医療の中心的役割を担いながら、地域医療教育と総合診療教育を実施するとともに、新たな専門医制度における総合診療専門医を育成しています。熊本大学の医師が教員として常駐し、研修医や専攻医を教育する仕組みで、当院が実践拠点の役割を担っています。
現在は教員2人が、専攻医1人と多くの研修医を指導しています。テレビ会議システムを用いたケースシェアカンファレンスなども毎週行い、県内の11総合診療科に在籍する医師の診療能力の向上や医療連携に役立てています。
この取り組みは、医師不足の解消につながる側面もあります。実際に1年間当院で育った医師が、2020年から、離島の市立病院に勤務しています。21年4月から天草地域の市立病院で予定される「在宅医療を主体とした総合診療プロジェクト」の構築にも寄与できています。
また、地域の医療機関同士で医師の相互支援を行う体制を構築する狙いで、2019年に地域医療連携ネットワーク構想がつくられました。熊本大学の任命を受けたネットワーク推進医が各医療圏の拠点病院に派遣され、医療圈域内の他の医師や医療機関の相談や指導に対応します。当院は、拠点病院の一つ。ネットワークによって安定した医療体制を維持拡充し、地域完結型専門医療の提供体制の構築を図ります。
現在は循環器内科、消化器外科、整形外科の医師がネットワーク推進医として派遣されています。さらに拠点病院で医師やメディカルスタッフへの研修や指導を積極的に行い、圈域内の医療環境の充実・向上なども同時に図ります。地域医療構想の新しいモデルとして、大いに参考となる事業ではないかと考えています。
─力を入れたいことは。
1992年の開設以来モットーである「救急車で天草の1号橋を渡らせない」、つまり天草医療圏での完結型医療を実践するという思いは不変です。
そのために最新の医療機器を積極的に取り入れ、都市部の病院と遜色ない医療の提供に注力してきました。フィルムレスは県下で最初に導入。3テスラMRI、2管球CTなどもしかり。費用はかかるけれども、最先端の機器は地域の方々への良い医療につながります。さらに若い医師が天草に来て他にはない機械を使えば、疎外感なく最先端の医療を展開することも可能。こうして地域の医療の質を担保しています。
─今後は。
医師会立のため公的な財政支援下の事業ではなく、経営的に満足な状況ではないことは大きな課題。パッションで乗り切っていかざるを得ない部分も否定できません。ただ、医療情報専門メディアの九州地方の医師を対象とした「働きたい病院」アンケートで、熊本県内で4位にランクインして驚きました。地域住民のため、また医療関係者のためにも「さらなる魅力ある病院づくり」を目指す励みになりました。
人材育成は医師だけでなく、多岐にわたる専門職を育てていく必要があります。その中で心掛けているのは「天草メディカルセンター」の頭文字を取った「AMC」。〝明るく、前向きに、力を合わせて〟というスタンスをモットーとしながら、今後も天草地域の医療を担っていきたいと考えています。

一般社団法人天草郡市医師会立 天草地域医療センター
熊本県天草市亀場町食場854─1
☎0969─24─4111(代表)
http://www.amed.jp/mc/