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在宅心臓リハビリの治験 少子高齢化を見据えて

在宅心臓リハビリの治験 少子高齢化を見据えて

大阪大学大学院医学系研究科 循環器内科学
坂田 泰史 教授(さかた・やすし)

1993年大阪大学医学部卒業。
同附属病院、同大学院医学系研究科循環器内科学講師などを経て、2013年から現職。
大阪大学医学部附属病院病院長補佐兼任。

 心疾患の治療に有効な心臓リハビリテーションを在宅でも行えるよう、大阪大学大学院医学系研究科循環器内科学教室の坂田泰史教授たちの研究グループが治験を進めている。心臓リハの医療的、社会的ニーズの増大を見込んだ試み。治験の意義や展望を聞いた。

―どのような治療ですか。

 正式には「オンライン管理型心臓リハビリテーション医療機器(RH―01)」の医師主導治験です。病院のリハビリ室の環境を患者さんの自宅に届けるイメージ。アプリを通じて医療者とオンラインでつながりながら、自宅で、一人でリハビリができる「リハビリ分野での遠隔医療」と言えます。

 心不全で入院している20歳以上の方が対象です。使う機器はタブレット型端末、ウエアラブル心電計、IoT型バイクの三つ。患者さんは自宅で心電計を着けてバイクをこぎます。

 患者さんの血圧や脈拍、心電波形、運動量は、タブレットに搭載されたアプリを通じて、病院側がリアルタイムで確認。医師や看護師、理学療法士が指導する仕組みです。循環器内科学のメンバーの谷口達典医師が最高経営責任者(CEO)を務める株式会社リモハブ(大阪府吹田市)が、一連の機器を開発しました。

 治験は2020年7月、全国の複数の医療機関で開始。病院でリハビリをする患者グループと、RH―01を使って在宅でする患者グループ、54人ずつに分けて実施し、在宅リハも同等の効果があることを証明したいと考えています。

―普及の課題は。

 心不全に対する心臓リハの有用性は以前から、各国の研究で科学的根拠が明らかにされています。しかし、国内での普及はまだまだです。ある研究では、心臓リハの適応となる心不全患者のわずか7%しか実施できていない状況とされています。

 大きな要因の一つに、心不全患者は高齢者が多いため、身体的に1人で通院しにくいことが挙げられます。
家族が付き添って通院できるかというと、少子化で親の世話をできる家族が少なくなり、平日に週2回も3回も付き添えません。離島や山あい地域などでは、外来リハビリを受けられる病院が近くにないというケースも少なくありません。

 この治験を足掛かりに、在宅でのリハビリが保険収載されれば、より多くの患者さんが受けられ、症状の改善や再発の予防につなげられます。RH―01によるリハビリは、指導する資格のある医療者と機器があれば、どこでも行えます。必ずしも患者の家でなくていい。例えばかかりつけ医の診療所などできれば、より安全に実施できるでしょう。

―今後の可能性について。

 心不全は心筋梗塞や心房細動、心臓弁膜症などの心疾患で心臓の機能が低下し、全身に悪い症状を来している状況を指します。

 そのベースとなる要因は加齢。高齢化社会ではいや応なく心不全患者が増えるのです。心不全は急に息苦しさなどを引き起こして命に関わるケースも多いため、入院して集中治療を受けることが多くなります。在宅リハビリを普及できれば、国の医療費抑制という側面にも貢献できるはずです。

 心不全以外の病気の多くでも、体を動かすことは有用とされます。例えば、軽度の認知症の人の進行を在宅リハビリによって遅らせるなど、幅広い応用を考えられることも魅力です。

 新型コロナウイルスの感染が収束しない中、通院しなくていいオンラインの在宅リハビリは、図らずも「ウィズコロナ時代」に適した方法でしょう。患者さんの体調の異変の兆しを速やかに感知するシステムの構築など、これからクリアしていくべき課題はいくつかあります。しかし、高齢化社会の日本で、世界に先駆けたリハビリの遠隔医療モデルを実現するため、引き続き取り組んでいきます。

大阪大学大学院医学系研究科 循環器内科学
大阪府吹田市山田丘2―2
☎06―6879―5111(代表)
http://www.cardiology.med.osaka-u.ac.jp/

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