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在宅を可能にする受け皿 地域包括ケア病床に期待

在宅を可能にする受け皿 地域包括ケア病床に期待

医療法人春風会 田上記念病院
理事長(なかむら・こういちろう)

1985年東京大学医学部卒業、1986年鹿児島大学医学部第三内科入局。
国立精神・神経センター(現:国立精神・神経医療研究センター)神経研究所、
東京大学大学院医学系研究科脳神経医学専攻神経内科助手などを経て、2006年から現職。

 「2025年問題」が間近に迫る。老老介護や認認介護、独居老人など、ますます深刻になる高齢者の課題と医療をつなぐために、2019年10月に「地域包括ケア病床」を16床開設した田上記念病院。中村浩一郎理事長に話を聞いた。

―地域の現状は。

 地域の高齢化は、鹿児島も同じです。特に独居老人の割合は全国で1、2位を争い、老老介護や認認介護も多い。「在宅医療」が非常に困難な県だと思います。

 確かに家族も家で診てあげたい、本人も診て欲しいと望むケースはあります。しかし、患者さん本人に介護が必要という意識がない、または望んでいないケースもあります。また、喀痰(かくたん)吸引を頻回に行う、あるいはバルーンが入っていて定期的に交換する必要があるなど、重い症状の人を家族が介護するのは、大変なことです。家族が、体力的にも精神的にも疲弊してきます。だからこそ、当院のような療養型の病院がなくてはならないと思っています。

 ただ実際は、慢性期の患者さんはかなり減ってきています。例えば、重度の機能障害に陥っていた脳血管障害は、血栓溶解療法や内視鏡下血腫除去術など、体の負担が少ない治療が確立され、回復が非常に良くなっています。

 心房細動で重い後遺症が残る脳塞栓にも、DOAC(直接経口抗凝固薬)などの有効な薬が開発されました。片まひを伴う失語症や高次脳機能障害の患者さんも随分減ったと感じています。

─新病床を開設されました。

 治療の進歩で助かる命が増えた一方で、在宅復帰のための治療や筋力回復のリハビリテーションを行うための受け皿が必要になっています。そこで、回復期病棟に加え、2019年10月、5病棟内に「地域包括ケア病床」を新設しました。

 もともと脳神経内科が専門ということもあり、優秀なリハビリスタッフがそろっていたことも後押しになりました。

 当院の5病棟内にある「地域包括ケア病床」は、診療科の枠を越えた病棟です。急性期から在宅までの居場所として患者さんに選んでいただくためには、あらゆることに対応できるだけの質の高い医療が求められます。立ち上げるに当たって、これまでの脳血管系中心の経営スキームから、患者さんの全身を診ることができる医療体制として脳神経内科、呼吸器内科、循環器内科、消化器内科、整形外科と診療科目を充実させ体制を整えました。

 急性期の治療を終え、心身をゆっくり癒やしてもらう。充実したリハビリで、自宅でご飯を食べられるぐらいに回復する。そんな施設として、機能していきたいと思っています。

─今後の課題は。

 医療従事スタッフの人手不足です。特にこの地域は、厳しいものがあり、看護師も、当院で必要不可欠なリハビリスタッフも足りていない状況です。

 さらに、リハビリ医療の向上を目指し、リハビリ歩行ロボット「ウェルウォークWW―1000」、高次脳機能障害を残した脳血管障害患者さんのためのドライビングシミュレーターなど、IoT技術やAI(人工知能)などの導入に早くから取り組んでいます。リハビリの効果を示すエビデンスの一つは「量」。ロボットであれば疲れるという心配はありません。同じ動作を単純に繰り返し、患者さんに実践してもらうことが可能です。もう一つが「質」。微妙にパラメータを調整し、難易度を変え、多彩なメニューを提供することができます。「量」と「質」の両面からロボットの導入は理にかなっているのではないでしょうか。

 最近は、AIがデータ改善のサジェスチョンをしたり、予後予測したりするリハビリロボットも発売されています。患者さんにとってより良い医療を提供するツールとして、今後も注目し、活用していきたいと思います。

医療法人春風会 田上記念病院
鹿児島市西別府町1799
☎099─282─0051(代表)
http://www.shunpukai-hospital.com/

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