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嚥下障害のための新たな病態評価の研究に着手

嚥下障害のための新たな病態評価の研究に着手

耳鼻咽喉科学教室
教授(ひょうどう・まさみつ)

1983年愛媛大学医学部卒業。
スウェーデン・カロリンスカ研究所ストックホルム南病院留学、
愛媛大学大学院医学系研究科准教授などを経て、2008年から現職。
高知大学医学部附属病院副院長兼任。

 食事を摂るために欠かせない嚥下(えんげ)機能。嚥下機能の低下は患者のQOLに直結する。日本嚥下医学会の理事長でもあり、これまでも嚥下内視鏡評価基準の提唱など、嚥下障害の正確な診断に尽力してきた兵頭政光教授が今、取り組んでいる新しい病態評価とは。

—嚥下障害の新たな病態評価の研究を始められました。

 嚥下機能の検査は嚥下内視鏡検査(VE)や嚥下造影検査(VF)を行うのが一般的です。内視鏡検査では上からの画像、造影検査では、正面や側面からの画像を捉えることができますが、どちらも平面的なため、正確な病態把握が行いにくい場合がありました。

 そこで、CGを使ってもう少し立体的に嚥下運動を捉えられないかと、始めたのが今回の研究です。患者のCT画像を基に、CGで立体的に嚥下運動を再現。嚥下機能のどこに問題があるのかを客観的に見られるようにします。このCGを使えば治療のシミュレーションを行うこともできます。例えば喉を引き上げる手術を行った場合、その後、どれくらい誤嚥が減るのかということを、実際にシミュレーションし、予測することが可能になります。

 ある程度の治療の効果は予測できたものの、このように患者ごとのCGを作成できるようになったのが大きいですね。その方の嚥下器官の構造がどうなっているのか、どこに問題があって誤嚥を起こすのか、どのような治療が適切であるのか。感覚的にではなく、客観的に診ることができれば、治療・診断の精度が上がることが期待できます。

 また患者さん本人やご家族の方にも、嚥下運動や治療法を視覚的に示せることが必要だと思います。これにより理解が深まり、より安心して治療に臨んでいただけるようになるのではないでしょうか。

 CGの作成に時間がかかるなど、まだ課題もあります。将来的には実用化できるよう、研究を進めていきたいと思っています。

—今後の医局の方針は。

 人員不足の状況は、以前からあまり変わっていません。現在、特に医師の少ない県西部や東部などに医師の派遣を行っています。しかし、一人常勤体制ということもあり、どうしても手術や緊急時などには、患者さん一人一人に向き合うということが難しい状況です。

 この状況を改善すべく、医局の方針として、専門性にとらわれず、耳鼻咽喉科の全ての分野をカバーできる医師の育成、体制づくりを進めていきたいと思っています。

 その他の新しい取り組みも、積極的に行っていくつもりです。CGを使った病態評価をはじめ、ITベンチャー企業と共同で、いくつかのプロジェクトを計画しています。

 例えばAIを使った痙攣(けいれん)性発声障害の診断や、物を飲み込む際の嚥下音から嚥下障害の評価を行う研究など、今後はITとの連携で医療の精度を高めることができればと考えています。

—医師の働き方、女性医師の支援については。

 現在、高知大学医学部附属病院副院長を兼任し、働き方改革の担当をしています。

 その一つとして、女性医師の働き方をどうサポートしていくかが大きな課題です。今や若手の3分の1ほどが女性医師。いかに彼女たちが働きやすい環境をつくるか、いかに産休育休後に戻ってきてもらうかが重要だと考えています。

 実際、当医局にも産休育休から復帰した医師がいます。夜間の当直を免除したり、子どもの急病時には交代できる体制をとったりという配慮を行っています。

 周囲のサポートをどうするのか、他の医局員に過度の負担がかからないよう配慮することも必要になります。医局のチームワークをもって、この課題に取り組んでいきたいと思います。

高知大学医学部 耳鼻咽喉科学教室
高知県南国市岡豊町小蓮185−1
☎088―866―5811(代表)
http://www.kochi-ms.ac.jp/~fm_otrhn/

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