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和歌山の小児医療を守り川崎病の新治療を開発

和歌山の小児医療を守り川崎病の新治療を開発


教授(すずき・ひろゆき)

1981年和歌山県立医科大学医学部卒業。
紀南綜合病院(現:紀南病院)、米テキサス大学ガルベストン校、
和歌山県立医科大学小児科学教室准教授などを経て、2015年から現職。

 小児の後天性心臓病の原因となる川崎病。その臨床・研究に長年携わってきた鈴木啓之教授と研究チームは、2019年に新治療法を発表。地域医療にも尽力する鈴木教授に聞いた。

―川崎病の新治療法とは。

 川崎病は、年間1万5000人以上が罹患(りかん)する原因不明の病気です。全身の血管に炎症が起き、重症化すると血管壁に瘤(こぶ)ができて冠動脈障害を合併する。川崎病患者の約2・6%に、後遺症として残ります。

 この冠動脈病変リスクを低減しようと開発したのが、通常の免疫グロブリン大量療法をシクロスポリンで強化する新治療法です。シクロスポリンはネフローゼ症候群などに有効な免疫抑制剤で、これを5日間少量内服すれば、冠動脈病変リスクを0・46倍に抑制できます。

 今の治療に追加して少量飲むだけなので、患者さんの負担が少なく、薬代が安いなどメリットも大きい。2月に保険収載となり、ファーストラインで使えるようになりました。

―小児科では珍しい、医師主導治験を経たそうですね。

 15年ほど前、強い関節症状のある川崎病の患者さんに、若年性特発性関節炎に有効と言われていたシクロスポリンを投与。効果があったことに着想を得たのが始まりです。後に千葉大学が発表したゲノム研究の結果と符合する点があったことで、共同研究が始まりました。川崎病の発症や重症化に遺伝的素因が関わっていることから、シクロスポリンがその発症メカニズムを抑えると考えたのです。

 2008年に先行研究を開始。2014年から、北海道から沖縄まで、全国22カ所の施設と連携し、2年5カ月かけて臨床試験を実施しました。

 この治療法は、結果的に非常に有効ですが、川崎病にはさまざまなタイプがあり、万能とは言えません。ステロイドやインフリキシマブなど評価されつつある他の製剤とどう組み合わせるか、冠動脈病変リスクゼロを目指して取り組んでいきます。

―和歌山県の現状は。

 和歌山県の人口の半分弱を抱える紀北地域に医療施設が集中しています。面積が一番広い紀南地域にある中核病院は田辺市、串本町、新宮市に計3カ所のみ。この南北格差が問題です。

 少しでも解消しようと、三重県との県境に近い新宮市立医療センターの小児科医を2人から3人に増員。くしもと町立病院では、病院事業管理者になられた元・近畿大学小児科教授の竹村司先生と協力して日曜外来を実施。田辺市の紀南病院では紀南地域の中核病院として重症患者を引き受け、不可能な場合は大学へ搬送する体制を取っています。

 大学では、循環器、腎臓、神経、小児がん・血液、未熟児・新生児の5グループで、県の小児科医療をカバーしています。血液悪性腫瘍では造血幹細胞移植に取り組み、腎臓分野ではネフローゼ症候群やIgA腎症治療を実施し、循環器グループは、心臓外科・麻酔科・ICUとチーム医療で取り組み、先天性心疾患の外科治療に成果を上げています。

 和歌山県の総合周産期母子医療センターとして、24時間365日稼働。ドクターヘリは15分以内に出発する体制が整っています。

 小児科医は、内科でいう総合診療科医。専門性が高いだけでなく、地域では広い分野を見られる医師が求められています。人材育成でも重要視している点です。

 顕著な例が、発達障害。対象の多さを考えると、すべての小児科医が関わる必要があり、小児科専門医の資格を取得する過程で、必ず経験を積んで対応できるようになるべきと考えて若手医師を教育しています。不登校や摂食障害、虐待など社会科学的な疾患が増加している今、しっかりと家族の相談に対応できる医師を目指してほしい。そのためにも地域との連携を進めていきます。

和歌山県立医科大学 小児科学教室
和歌山市紀三井寺811―1
☎073―447―2300(代表)
http://www.wakayama-med.ac.jp/med/shonika/

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