九州医事新報社 - 医療・医学の〝今〟を伝えて62年

各領域のスペシャリストがあらゆる疾患に対応

各領域のスペシャリストがあらゆる疾患に対応


教授(すずき・ひであき)

1983年東北大学医学部卒業。
米ワシントン大学耳鼻咽喉科学教室客員研究員、東北大学耳鼻咽喉科講師などを経て、
2003年から産業医科大学耳鼻咽喉科教授。産業医科大学病院副院長などを兼任。
改称により2017年から現職。

 近年、頭頸部がんを含めて手術件数が大幅に増加しているという。患者のQOLを維持するために、「手術は機能回復とともに、美しく仕上げる」のが理想だとする鈴木秀明教授に、最近の傾向や地域の特性などを聞いた。

—なぜ頭頸部がんが増えているのですか。

 耳、鼻、口腔、咽喉頭など頭頸部のがんが増えており、この部分の器官は解剖学的に一般外科では対応しにくい面があります。

 頭頸部がんの増加の背景には、社会の高齢化があります。特に下咽頭がん、喉頭がんは主に60代以上の男性に発生します。そのリスク要因は喫煙。今は禁煙しているものの、働き盛りの時にたばこを吸っていた世代が発症年齢を迎えていることが大きく影響していると思います。

 一方、甲状腺がんは女性に多く、20代にも発生します。検査の精度が向上したため、他の疾患で行ったCTなどの画像検査で偶然甲状腺腫瘍が発見されるケースが増えています。

 甲状腺がんの手術では頸部の解剖、特に甲状腺のすぐ裏側にある反回神経の解剖に熟知していることが重要です。また腫瘍の浸潤や手術操作による反回神経まひをチェックするには喉頭内視鏡が必須ですが、耳鼻咽喉科医はこの内視鏡検査に熟練しています。

 甲状腺腫瘍の摘出では、鎖骨のすぐ上の皮膚を横に切開する襟状切開が一般的ですが、鎖骨下など目立たない部分を小切開して内視鏡下に摘出する方法も取り入れています。

—地域的な特性は。

 東日本と比べると、黄砂やPM2・5による鼻炎が多いですね。花粉症も増えています。
 
 鼻炎と副鼻腔炎は私の専門の一つで、鼻粘膜の表面にある線毛運動の仕組みに魅了され、ここ数年研究を行っています。線毛運動は粘膜にくっついた異物や病原体を排除するのに重要な役割を果たしており、鼻副鼻腔から気管支に至るまでの呼吸上皮に共通してみられる機能です。これについての研究は鼻副鼻腔のみならず下気道を含めた気道全般の病態解明や新しい治療法の開発につながるものと考えています。

 中耳炎の病態研究にも10年前から取り組んでいます。骨が浸食される真珠腫性中耳炎は放置できない疾患です。難聴やめまいに始まって、内耳が侵されて聴覚が失われ、さらに進行すると顔面神経まひを引き起こします。さらに頭蓋内に菌が侵入して髄膜炎や脳膿瘍を来すこともあり、一般的な中耳炎のイメージでは想像できないほど重症化しうる疾患です。「なぜ骨が溶けるのか」を解明して、手術せずに治せる方法を探っています。

—教室の特徴は。

 それぞれ異なった領域のスペシャリストがいて、幅広い研究と治療が可能なことです。

 難聴の治療については、現在、鼓室形成術と人工内耳埋込術を行っていますが、三つ目の方法として人工中耳埋込術を開始すべく申請の準備をしています。

 北村拓朗准教授は、鼻副鼻腔と口腔・咽頭領域を専門としており、特に、睡眠時無呼吸に関する臨床と研究の実績を積み上げてきました。睡眠呼吸障害は最近増加傾向にあり、高血圧や糖尿病、心臓疾患などの疾患につながる病態です。こうした病態を解明し、有効な治療法を開発することを目標としています。

 頭頸部がん治療のエキスパートである若杉哲郎准教授は、分子標的薬やがん免疫療法について多くの経験と実績を積んでおり、他施設や県外からの治療、セカンドオピニオンの依頼も増えています。

 福岡県の筑後地区や京都地区は耳鼻咽喉科医がきわめて不足しており、地域の患者さんが困っていることを現場で実感しています。医療過疎地域の解消に貢献するためにも、一人でも多くの優れた医師を育てるのが私たちの務めだと考えています。

産業医科大学医学部 耳鼻咽喉科・頭頸部外科学
福岡県北九州市八幡西区医生ケ丘1—1
☎093—603—1611(代表)
https://www.uoeh-u.ac.jp/kouza/jibika/

この記事を読んだ方は他にこんな記事も読んでいます

最新の記事情報が取得できます

Twitter

「いいね!」ボタンを押すと、最新情報がすぐに確認できるようになります。

Instagram

フォローする」ボタンを押すと、最新情報がすぐにツイート上で確認できるようになります。

コメントはこちらから

メニューを閉じる