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医療手法的な改善策で職員の心を動かす

医療手法的な改善策で職員の心を動かす

出水総合医療センター
病院事業管理者( いまむら・じゅんいち )
1977年山口大学医学部卒業。
米シンシナティ大学医学部メイフィールド神経研究所客員研究員、
国立下関病院(現:関門医療センター)脳神経外科、
鹿児島医療センター副院長などを経て、2016年から現職。

 鹿児島県出水市の医療の中核を担う出水総合医療センターは、毎年数億円の経常赤字で累積欠損金が膨れ上がり、経営危機に陥っていた。しかし、この3年余りで大きく改善。2019年度の純利益は黒字になる見通しだ。経営好転の要因はどこにあるのか、経営改善の陣頭指揮をとる今村純一病院事業管理者に聞いた。

―就任当時の経営状況は。

 私が当院の病院事業管理者に赴任した2016年の累積欠損金は77億円、経常収支は2億8000万円の赤字。正直、どこからどう手を付ければよいのか途方に暮れる思いでした。 

 まずは、半年ほど経営学や会計学を学び、当院の経営状況の推移や全国の自治体病院の決算書を分析することから始めました。

―どのような改善策を講じられたのでしょうか。

 一般的な経営コンサルタントの手法は病院には適さないと思い、医師である私にしかできない医療手法的な経営改善策を考えました。

 経営は生きものです。人と同じで病態の本質を見極めなければなりません。例えば、湿疹ができたからステロイドを塗って終わりではなく、湿疹ができたのはなぜか本質を考える必要があります。見た目とその中に内在する問題は違いますから、それを見極めるのに時間がかかりました。

―具体的には。

 職員の経営意識に明確な方向を示すため、経営危機からV字回復を果たした常滑市民病院の看護局長や常滑市の副市長、総務省の地方公営企業等経営アドバイザーなど、外部の方に病院経営に関する講義をしていただきました。その理論や手法は職員の視野を広げ、励ましになったようです。

 また、毎日の病床の稼働状況を医局や病棟に掲示したり、毎月の決算報告を公開したり、経営数字や情報を広く公開したことも職員の経営意識の向上に役立ったと思います。

 こうした取り組みにより、2017年度は医業収益が約2億円も増収しました。職員一人ひとりが秘めていた力を発揮してくれた結果だと思います。私はこれを、内科的治療と呼んでいます。内部治癒力の発揚による経営改善です。

 続いて2018年は外科的処置を行いました。市から出向していた職員を6人減員。さらに組合との給与削減では労働分配率の話をしました。労働分配率とは、簡単に言えば利益の中から何%を給与に回しているかを示す指標で、日本の平均は70%以下です。しかし、当院は140%。収益に見合わない報酬が支払われていたのです。組合も納得し、給与に対して2〜10%の累進削減、平均6%の削減でまとまりました。私と院長は18%の削減です。

 その結果、2018年度の経常支出は2億円減少。黒字にこそなりませんでしたが、経常収支は1850万円の赤字にとどめることができました。これは、借入金や市からの補助金が無くなった上での数字ですから大きな改善です。

 2019年度は、予算原案と遅れていた会計法の見直しを行いました。これによって約80億の累積欠損金は18億円に減少。経常収支は9000万円、純利益3億3000万円の黒字になる見込みです。

―今後の課題と展望は。

 当院の経営はまだまだ回復途上で、経営を安定させることが目下の目標です。 明るい材料として、今年は新たに3人の医師を招聘(しょうへい)できました。今後は出水市の医療拠点として、AIやICT、I o T を活用した最先端の医療機器を導入し、当院でしかできない検査や手技ができる環境を整えていきたいと考えています。そして、地元開業医の皆さんとWin-Winの関係を築き、出水市民の皆さんの健康と命を守るために最善を尽くしていきたいと思っています。

出水総合医療センター
鹿児島県出水市明神町520
☎0996―67―1611(代表)
http://hospital-city.izumi.kagoshima.jp/

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