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医療の質を維持し、健全な病院経営を目指す

医療の質を維持し、健全な病院経営を目指す


病院長(やました・しゅういち)

1984年宮崎医科大学(現:宮崎大学)医学部卒業。
久留米大学高度救命救急センターICU、堀川町山下内科呼吸器科医院、
佐賀大学医学部附属病院総合診療部長などを経て、2016年から現職。
同病院総合診療部教授兼任。

 佐賀県の高度急性期医療を担う佐賀大学医学部附属病院。2011年にスタートした病院の再整備も順調だ。新専門医制度や働き方改革など医療を取り巻く環境が変化しつつある今、健全な病院経営に向けた取り組みや展望を山下秀一病院長に聞いた。

─経営の現状は。

 世界レベルの優れた医療設備と機器をそろえようと、2011年から病院の再整備を進めてきました。高度救命救急センターや増設した手術室は、すでに完成し、工事費の著しい高騰でストップしていた外来棟の再整備も再開しました。2020年の10月には第1期分の増築工事が完成予定です。再整備の効果は表れてきており、年間の手術件数は7000件に達する勢いです。

 私は開業医の経験があり、病院長就任当初から数字の見方はある程度わかっていました。しかし、大学病院の経営は非常に複雑です。積み立ても目的のあるものしかできないため、一般病院のように赤字が出たからといって内部留保からカバーすることはできません。

 具体的な数値目標を掲げる方が成果を出しやすいと考え、現在は、各診療科から目標数値を提示。それを基に病院全体の目標数値を決めるようにしています。売り上げだけでなく、手術数やカテーテルアブレーション治療の件数など、各科の得意分野も目標数値に設定しています。

 毎月、その達成状況をチェックし、達成できていない科は診療科長や医局長などを集めて、原因と対策を考えます。患者さんを紹介いただく数が減少している医療機関には、診療科長と一緒に私があいさつに伺うこともあります。

─現状の課題は。

 新専門医制度が始まって3年目になりますが、当院もシーリング(専攻医の募集定員の制限)がかかり、希望通りに医師を採用できていません。

 現在、大学で訓練した医師を地域の病院に出していますが、現状の医師不足に加えて本格的に働き方改革が始まれば、その医師たちを引き上げなければならなくなり、地域医療が崩壊するのではないかと危惧しています。今は、閉塞感でいっぱいです。

 言うまでもなく、医師の労働環境の改善は重要です。当院も、特定看護師をつくる準備をしたり、医師事務作業補助者の数を増やしたり、ワークシフトやワークシェアによって、純粋に医師が能力を発揮できる環境を整えようとしています。しかし働き方改革は、もっと一つひとつのことをきちんと考えて実施すべきです。今のスピード感で進めるものではないと思います。

 難しいかじ取りになりますが、高度急性期医療を必要とする患者さんをしっかり診療できる体制を整えるべきだと考えています。

─今後の展望は。

 職員が頑張ってくれたおかげで再整備の採算のめどが立ちました。今後は、再整備のためにずっと抑えてきた、高度医療機器の調達に向けて計画をシフトしていきます。まずは、悪性腫瘍の高度治療に対応できる高エネルギー放射線治療装置リニアックなどを導入していく予定です。

 地域の医療機関との連携においては、2020年4月から、佐賀県診療情報地域連携システム「ピカピカリンク」の開示情報を広げ、カルテやサマリーも閲覧できるようにします。これによって、紹介いただいた病院の医師と当院の医師の連携がスムーズになり、患者さんにも、より安心していただけると思います。

 また、当医学部は、新規抗がん剤や細胞製人工血管の開発研究など、ユニークな研究にも取り組んでいます。大学ですからこうした臨床研究や技術開発にも力を入れていきたいですね。

 何より、佐賀県の高度急性期医療を担う医療機関としての役割を果たしていけるよう、健全な病院経営に尽力していきたいと思います。

佐賀大学医学部附属病院
佐賀市鍋島5─1─1
☎0952─31─6511(代表)
https://www.hospital.med.saga-u.ac.jp/

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