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医療と働き方変えるAIでハイボリュームセンターへ

医療と働き方変えるAIでハイボリュームセンターへ

 田淵 仁志 眼科主任部長(たぶち・ひとし)
1997年大阪市立大学医学部卒業、2002年同大学院修了。
社会医療法人三栄会ツカザキ病院眼科医長などを経て、2007年から現職。
広島大学医学部「医療のためのテクノロジーとデザインシンキング」
寄附講座教授。


 地域の救急医療を担うツカザキ病院。新館フロア1階を占めるのが、総勢130人を抱える眼科部門だ。着任15年で国内最大級のチームと臨床データベースを築き上げたリーダーは、経営学修士でもある。その視線の先にある〝医療のカタチ〟とは。

―常勤医20人超。疾患別の診療体制です。

 海外では標準的なスタイル。網膜の先生が緑内障を診ることはありません。専門性が高いということは、患者さんにメリットがあるだけではない。ドクターは自分の仕事に集中でき、ワークライフバランスを保ちながら世界と戦えるということです。

 これでも医師は少ないくらいです。僕らが目指すのはハイボリュームセンター。現在、手術数は年間8500件を超え、その他の治療も含めると1万件を上回ります。当初から臨床データベースの構築を進め、IDは7万件、画像データは100万件超。眼科のデータベースとしては断トツで国内最大でしょう。

 データを即時に共有するプログラムは自作です。僕自身もプログラマーですが、他にもAIエンジニアが7人。年間1万件の症例に対応し、その質を担保するためには、患者さんをある程度解析して作業に当たる必要がある。遠隔診療にも応用する予定です。

 2010年ごろから、より進んだ活用方法を兵庫県立大学工学部の人たちと共同で研究してきました。ディープラーニングによって精度はすごく上がってきた。僕らが取り組む人工知能開発やビッグデータ解析で実現できることは多岐にわたります。


―データの活用例は。

 一つは手術の安全システム向上。顔認証や眼内レンズの入れ間違い防止などです。全手術をITシステム上で監視。術後の診察内容はスマホに自動で送信します。集中管理で効率性を高めます。

 その先にあるのは、皆保険制度を守りたいという思いです。医療の効率化は医療費の効率化でもある。ムダなお金を使わずに、どう質を維持するか。

 誤解を恐れずに言うと、例えばココイチのカレーや吉野家の牛丼のようなシステムの医療。つまり、いつでも安全で安い医療を一律的に提供するには、セントラルキッチンの優れたオペレーションを導入することです。ハイボリュームセンターの意義はそこにある。

 システム開発においては、いろいろな企業と研究を進めているところです。そして、ワークライフバランスです。僕自身が6時間労働の推進者ですので、ドクターの勤務時間は短いですね。時間管理を徹底し、自分の仕事に集中する。結果、子育てと両立しながら高いレベルの医療、論文作成、学会発表が可能です。

 必要なのは、外に向かって発信する力、チームをコントロールするセンスです。日本にとどまらず、最終的にはアジアから患者さんを集める。そのためには自分たちの存在を発信することが大事です。

 チームの多数を占めているのは視能訓練士。4月現在で49人が在籍しています。彼らの能力開発や待遇の改善にもAIを活用できればと思っています。


―今後の展望について教えてください。

 他の業界はどうやって世界のやり方に自分たちをフィットさせるかを考えています。

 では、医療業界はどうか。システムの構築だけでなく、経営の能力もより試されるでしょう。成長し続けるチームであるために、今後も顧客ベースの視点で自分たちの方法論を追求していくだけです。

 この4月、広島大学で「医療のためのテクノロジーとデザインシンキング」という寄附講座を開講。さまざまなアイデアを、フラットに机上に乗せていきます。面白くなるのではと思っています。


社会医療法人三栄会 ツカザキ病院
兵庫県姫路市網干区和久68―1
☎079―272―8555(代表)
https://www.tsukazaki-hp.jp/care/ophthalmology/homeh

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