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医師を育てるのは患者 「一例一学」の精神で

医師を育てるのは患者 「一例一学」の精神で


教授(いしかわ・おさむ)

1979年群馬大学医学部卒業。米サウスカロライナ医科大学リウマチ免疫学教室、
群馬大学医学部皮膚科教授などを経て、2003年から現職。

 「一例一学」。一人ひとりの患者さんに向き合うことで医師は成長していく。臨床医としていかにあるべきかを若き医師に伝え続けている石川治教授。臨床医に必要なこととは何か、そしてどのような医師を育てていきたいのか、その思いを聞いた。

―教室の特徴は。

 臨床ができる医師を育てています。大学では、重症で診断がつかないような患者さんが来院されます。全身性強皮症や皮膚筋炎などの膠原病、メラノーマなどの皮膚悪性腫瘍といった命に関わる皮膚疾患がある患者さんたちに対応することで、「正しい診断や治療をするにはどうすれば良いのか」という、臨床的な思考を養っていくのです。

 医師を育ててくれるのは患者さんです。特に重症の方を担当することは、その後の自分自身の成長につながっていきます。

 命を救えなかったことで、命の大切さが分かる。どうしても助けられなかった患者さんに対して、その時の無念さ、悔しさ、力の足りなさを感じながら次へ進んでいくのが臨床医だと思います。臨床の経験から疑問に思ったことは、研究につながっていきます。常に疑問を持つこと、結果には必ず原因があることを伝えるようにしています。

 在籍するメンバーは、半数以上が女性です。家庭や育児と両立しながら頑張っている先輩を見て、また後輩たちも医師としてのキャリア形成が見えてきます。良いロールモデルになっているのではないかと思います。

 外国人の大学院生も在籍。現在はインドネシアとネパールからの留学生が、非常に熱心に学んでいます。

―全身性強皮症や皮膚筋炎の研究をされています。

 難病である全身性強皮症、皮膚筋炎の発症メカニズムの解明に取り組んでいます。この研究は先々代の教授から続く歴史があります。

 皮膚筋炎は、抗MDA5抗体が陽性の場合、高い確率で急速進行性間質性肺炎になりやすく、抗TIF1γ抗体が陽性の場合には悪性腫瘍を合併することが分かっています。

 がんでは早期発見が大切です。皮膚筋炎の皮膚症状を知らなければ、単なる湿疹と判断するなど、医師が見落としてしまう可能性もあるのです。命に関わるだけに、臨床医の正しい知識と診断が必要になります。

 重症の患者さんに対して、正しい診断をし、あきらめずに治療を行っていくことは、臨床医の役目だと思います。

─臨床医に対して。

 大切なのは「一例一学」。これは私がつくった言葉で、一人ひとりの患者さんから学ばせていただくというものです。

 臨床医には瞬間的に患者さんが今どのような状態にあるのかを判断するための「想像力」、そして研究などに生かしていくクリエーションとしての意味の「創造力」が必要です。

 患者さんが名前を呼ばれて「はい」と返事をした瞬間から診察は始まっています。そして診察室に入ってくる患者さんの歩き方、あいさつの時の視線など、それらを瞬時に捉えることが大切だと思っています。

 今後の課題は、基幹病院で活躍できる30代〜40代の医師の確保です。皮膚科は、専門医の資格取得後、開業をする若手が多いのですが、私は基幹病院でせめて10年以上は経験を積んでほしいと思っています。

 「守破離(しゅはり)」という言葉があります。「守」は基本を学ぶことであり、「破」は疑問点に対して自分なりに解決すること、「離」はオリジナルを確立していくことです。「守」の段階でありながら開業するのは、早計ではないでしょうか。

 患者さんに対して真摯(しんし)に向き合うためにも、臨床の経験を多く積むプログラムをつくっていくべきだと考えています。

群馬大学大学院 医学系研究科 皮膚科学
前橋市昭和町3―39ー15
☎027―220―7111(代表)
http://dermatol-h.dept.med.gunma-u.ac.jp/

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