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動注化学療法の認知を広め肝がん患者に希望を

動注化学療法の認知を広め肝がん患者に希望を

   板野 哲 理事長 (いたの・さとし)
1986年久留米大学医学部卒業、同第二内科入局。久留米大学病院病棟医長、
久留米中央病院長、いたのクリニック院長などを経て、2015年から現職。

  血管造影法を用いて、肝臓および肝臓周辺の臓器にできた悪性の病気を治療する久留米中央病院。全国から肝臓の病気、特に進行した肝がんの患者が訪れている。今も月間延べ100例の血管造影治療を行う板野哲理事長に、病院の現状と展望を聞いた。

―病院の特徴は。

 主な対象疾患は進行した肝細胞がんと転移性肝がん。動注リザーバーによる動注化学療法を中心に治療していることが大きな特徴です。カテーテルをがんの近くまで挿入し、リザーバーに接続して抗がん剤を投与。患部のより近くに抗がん剤を入れられるため高い効果が期待できる方法です。

 非常に繊細な手技が必要ですが、私自身は29年かけてこの治療を体得してきました。2000年に独自開発した「システム―i」は、埋め込みカテーテルの中にさらにもう一つマイクロカテーテルを通すもの。ピンポイントでの動注が可能になっただけでなく、肝臓以外のところでも大動脈から入り、投薬できるようになりました。当院の動注療法で高い奏効率が得られている転移性肝がんは大腸がんが筆頭で、その次に胃がん、乳がん、胆管がんです。


―近年の患者の傾向は。

 患者さんで一番多いのは私の治療をよく知る他院のドクターからの紹介で、治療困難と判断されてご連絡いただくケースです。東京などの遠方から訪れる方もいる一方で、以前に比べて来院する患者さんの全体数は減っています。

 というのもこの1~2年の治療薬の進歩が目覚ましい。私が久留米大学時代から治療している肝細胞がんに限っても、分子標的薬による進行がんの奏効率は非常に高くなっています。分子標的薬と免疫チェックポイント阻害薬の組み合わせにより、さらに高い奏効率が得られるという臨床試験結果もあります。

 こうした現状の中で、それでも治らない非常に進行した緊急性の高い肝細胞がん・転移性肝がんに対し、最後まで責任を持って治療するという姿勢を貫きたいというのが私の思いです。実際に動注化学療法によって効果が見られた症例も多くあります。例えば他院で終末期ケアを宣告された大腸がんの肝転移の患者さんが、当院を訪れ、動注化学療法を行うことで病態が改善したといったこともありました。

 動注化学療法は日本独自に開発された治療法ですが、導入施設は国内にわずかしかありません。エビデンスがないのがその理由です。今後は学会発表などを通して、この治療法について、もっと世に訴えていきたい。進行した肝がんで苦しむ多くの方に、選択肢が残されていることを知ってほしいのです。


―最新のトピック、病院の今後の展開を。

 転移性肝がんについては抗がん剤の半分をシステム―iで肝臓に直接動注、もう半分を同時に静脈から全身に投与する治療を始めており、良い結果が見られています。肝臓に動注した薬は漏出して全身にも回るため、全身投与した薬と合わせれば血中濃度は全身化学療法を行う場合とほぼ同じ。いわば肝臓治療をより強化した全身化学療法です。

 肝がん以外の良性肝疾患で苦しんでいる人の治療にも積極的に取り組んでいます。新たな試みの一つが肝臓の動脈カテーテルの手技を生かした、肝硬変の再生医療。肝硬変患者で生体肝移植が受けられない、がんがない方を対象に脂肪幹細胞を取り出し、培養したものを動脈からカテーテルを使い肝臓の中に直接入れる治療です。

 昨年10月にはリハビリテーション科も新設。がん治療の上で非常に重要な「がんリハビリテーション」に力を入れるべく、今年5月の本格始動に向けて準備しているところです。

 患者さんの病態が良くなっていく時の喜びは何物にも代えがたい。今後も、がんの方を受け入れる病院として、啓発活動も含め取り組んでいきます。


医療法人いたの会  久留米中央病院
福岡県久留米市小森野2―3―8
☎ 0942―35―1000(代表)
https://www.kurume-chuo.jp/


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