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労働力人口減少時代 病院給食 改革待ったなし

労働力人口減少時代 病院給食 改革待ったなし

 

30年ほぼ据え置き1食当たり640円

 「給食部門の赤字はなかなか解決の糸口が見えず、どこの施設も悲鳴を上げているというのが、現状」。日本病院会副会長の島弘志氏は、病院経営における給食事業の今を、こう表現する。

 背景にあるのは、変わらない食事療養の点数の一方で上がり続ける人件費と材料費。赤字幅は拡大傾向にある。さらに、病院給食の現場が置かれている早朝・夜間勤務を必要とする就業条件、労働力人口の減少に伴う人材不足が深刻さを増しており、現行の運営方法では継続が困難と判断される例も出てきている。

 日本病院会など15団体が所属する日本病院団体協議会は長年、食事療養費の見直しを国に訴えてきた。8月27日、厚生労働省保険局長に提出した「令和4年度(2022年度)診療報酬改定に係る要望書【第2報】」の中にも食事療養費の見直しが盛り込まれ、入院時食事療養費や特別食加算の増額などを要望している。

 1994年に導入された入院時食事療養費の基準額は、1日当たりから1食当たりへの変更があったものの、およそ30年にわたり、ほぼ変更がなく、現在1食当たり640円(※入院時食事療養Ⅰ)。

 一方で、消費税増税もあって野菜や肉など食材にかかる材料費は上昇。人材不足も深刻で、「調理に携わる人を全て直接雇用できている施設の方が、むしろ少ない」と島氏。派遣や委託も活用しながら、人材を確保している状況だと語る。




受託業者も苦慮 撤退の判断も

 委託される企業側も、病院と同じ課題を抱え、特に、人材の問題に頭を悩ませている。「雇用年齢の上昇が単価を押し上げ、東京五輪も病院給食現場の雇用を難しくした」と語るのは、給食事業者約230社が会員となっている「日本メディカル給食協会」専務理事の千田隆夫氏だ。

 年齢階級別就業者数の推移を見ると、65歳以上の数、割合ともに高まっている。現状の首都圏では五輪関連の求人の増加もあり、「とても太刀打ちできない状況から、人員を満たせないまま求人広告を出さなくなった事業者もあった」という。

 「給食会社の中には、地域に根差した小規模なところも多くある。これまでは、なんとか契約を維持し、病院給食を支えようとしてきたが、条件が厳しい病院からは撤退するという判断をせざるを得ない状況も起こっている」と、
表情を曇らせる千田氏。診療報酬による上積みを待つだけでなく、地域単位、病院単位でできることはないのだろうか。次ページでは、大きな決断をした病院の事例を紹介する。



給食を提供し続けるには?
社会医療法人雪の聖母会 聖マリア病院の挑戦


目指したのは複合的な問題の解決

 、急性期病床を中心に1097床を有する「」は、2021年11月、新厨房施設「メディカルフードセンター」を稼働予定。同病院の献立に合わせた調理済み冷凍食品を、厨房施設で再加熱・盛り付け・配膳する、新たな方式を採用する。

 これまで、院内調理で給食を提供してきた聖マリア病院。同じ法人で、回復期・慢性期合計198床を有する「聖マリア病院ヘルスケアセンター」にも、聖マリア病院の厨房施設で作った食事を運び、提供してきた。

 しかし、「調理スタッフの募集をかけても、なかなか集まらない状況でした」と栄養指導管理室長の立野順子氏。同院がある福岡県久留米市内にある病院数は30超。人口の減少に加え、競合が多いこともあって採用は難航し、パートタイム勤務に募集を切り替えたり、派遣を活用したりしても、十分なスタッフ数が確保できないこともあったという。

 さらには、人件費や原材料費の上昇も問題に。同院の厨房施設の老朽化に伴い、建て替えの検討が必要になった2016年、同じ法人が運営する介護老人保健施設「聖母の家」(定員100人)も含めた3施設の給食について「複合的な問題を解決する方法」の模索が始まった。




「省人化」を図りつつ 働き方改革も推進

 当初は、院内調理による改革も候補に挙がったが、最後までネックになったのが、人材確保の問題。少ない労働力で持続的に運営できる給食事業を目指して、大規模施設の給食事業には参入していなかった大手食品会社傘下の企業と組んで、今回の手法を作り上げてきた。

 病院側は企業に献立を提出。調理済み冷凍食品が、久留米市隣接の小郡市にある倉庫から3日に1度、病院に運ばれる。

 企業側の管理栄養士も関わることもあって、病院の管理栄養士が献立作成にかける時間や材料発注にかけてきた時間を短縮することが可能。より多くの時間を、栄養指導や入退院支援に充てられるようになる。この「働き方改革」は労働生産性向上につながり、診療報酬上の評価を上げることにもなると見込んでいる。

 さらには、朝食準備のために午前5時台に出勤する必要があった調理スタッフの「早出」の時間も30分程度遅らせることができ、働きやすさがアップ。再加熱と配膳が主な業務になることから、新たに採用するスタッフの教育に要する手間や時間も軽減できる。冷凍技術を活用するからこそ抑制できる価格と保存期間(1年間)も魅力で、災害時にも活用できる。



 「問題が解決できるだけでなく、収益上、イニシャルコスト(初期投資)も十分回収できると試算している」と同病院病院長の島弘志氏。

 同方式は「聖マリア病院ヘルスケアセンター」と「聖母の家」ですでに導入済み。提供食数が増えるほど、単価の引き下げが期待できることもあり、「同じことで悩んでいる病院が近隣にあれば、ぜひ見学に来ていただきたい。お互いの病院にとって、良い方法になればと期待している」と話している。


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