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切れ目ない緩和ケア 地域全体に展開

切れ目ない緩和ケア  地域全体に展開

公立八女総合病院企業団 みどりの杜病院
原口 勝 院長(はらぐち・まさる)

1981年九州大学医学部卒業。
九州がんセンター消化器外科部長、那珂川病院緩和ケア部長などを経て、2015年から現職。

 2011年に開院し、地域で「切れ目のない緩和ケア」を提供している公立八女総合病院企業団みどりの杜病院。2020年10月、原口勝院長が監修した書籍「地域に展(ひら)く緩和ケア 完全独立型ホスピスみどりの杜病院の実践」が出版され、その取り組みに注目が集まっている。

―病院は10周年を控え、院長は就任から約6年です。

 私が院長に着任したのは2015年ですが、その3年前から八女地区で週1回の訪問診療を行い、当院と同じ経営母体である公立八女総合病院で非常勤医として勤務していました。

 その間、外部から当院の評価をしつつ、理想の病院像や地域全体の緩和ケアの在り方を考えていました。完全独立型のホスピスである当院は、当時、地域の方々に「死に場所」というネガティブな印象を持たれていた。まずはこれを払拭(ふっしょく)し、地域がん診療連携拠点病院である公立八女総合病院との連携もよりスムーズにしたいとの思いを持って院長に就任しました。


―就任後、実践したことは。

 まずは「在宅医療推進室」を設け、本格的な訪問診療を開始しました。入院したくない患者さんや、自宅で最期を迎えることを希望する患者さんに、在宅で緩和ケアを提供しています。一方、家庭の事情などで在宅でのケアが難しい場合は、当院への入院を勧めることもあります。

 また、公立八女総合病院へ出向いて緩和ケア外来を担当しました。通院される患者さんにケアを施す中で、ホスピスへの入院や在宅医療についても説明し、さまざまな選択肢があることを周知して、ホスピスの正しい認識を伝えました。

 治療が難しいがんを患っていてもさまざまな選択肢があり、安心して自分の望む場で最期を迎えられる地域だと思ってもらうことが狙いです。がん患者さんは、がん治療の担当医師からいきなりホスピスを勧められると戸惑い、「自分は切り捨てられるのか」と思い詰めてしまうことがあります。緩和ケアのスタッフが同席して対話することで、治療ができなくなった後も継続して診てもらえる、という安心感を与えたいと思います。

 緩和ケア病棟の施設使用料の撤廃も行いました。これまで当院に入院する場合に月5~6万円ほどの自己負担が必要でしたが、これを撤廃することで経済的に困っている方の入院も可能となりました。これらの施策や地域での講話などを通して、当院は「死を待つ場所ではない」ということが浸透し、理解を得られてきたのではないかと感じています。

―取り組みを記した本を出版されました。

原口院長が監修した書籍

 患者さんやご家族から、「もっと早く来れば良かった」という声をよく聞きます。それならば、ケアの様子を地域に伝えたいと思ったのがきっかけです。私だけでなく、全職員が執筆に携わりました。

 反響は予想以上で、全国の医療関係者らから多くの手紙やメールを頂きました。職員の意識の高さを評価するメッセージもあり、うれしく思っています。

 現在、国内では医師の専門性が高まると同時に、「治す医療」も日々進化しています。しかし、「治らない人」、「治せない人」もいて、この方々を総合的に診ることも求められています。緩和ケアも総合診療の一つであり、これまで以上に患者さんの生活全体を診られるような「全人的なケア」を地域に展開していく必要があります。

 そのため、今後は総合診療医や緩和ケア医の育成に注力します。習熟した医師が1人でも増えれば、在宅での症状緩和にも迅速に対応でき、切れ目のない緩和ケアが強固なものになるでしょう。

公立八女総合病院企業団 みどりの杜病院
福岡県八女市立野362―1
☎︎0943―23―0002(代表)
http://www.yame-midori.jp/

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