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先端技術を駆使し 高度な情報提供を

先端技術を駆使し 高度な情報提供を

国立大学法人 山口大学大学院医学系研究科 放射線医学講座
伊東 克能 教授(いとう・かつよし)

1988年山口大学医学部卒業。
米トーマス・ジェファーソン大学医学部放射線科客員研究員、
山口大学医学部附属病院准教授(放射線部)、川崎医科大学放射線医学(画像診断)教授、
同附属病院院長補佐などを経て、2017年から現職。

 病気の診断に欠かせない画像診断。そのスペシャリストである放射線科医にとって、診断を下すためのツールは重要なものだ。次世代型の機器を導入し、より高度な医療の提供を目指す山口大学の伊東克能教授に、現状と自身の研究について話を聞いた。

―最近の取り組みについて教えてください。

  今年に入ってから、CTを1台、MRIを2台、更新しました。従来のCT画像が約26万画素だったのに対し、今回新しくしたCTでは、最大16倍の約420万画素の画像が撮影できます。

 高精細な画像が撮影可能となり、これまで見えなかった細かな構造、例えば肺の小さな結節の形状が分かるようになりました。膵臓がんや胆のうがんの進展範囲の評価、胃がんの壁浸潤の進展度合いも、より正確に評価できています。今後、病理組織標本との対比などを加え、より正確な診断を目指しています。

 MRIに関しては、AI搭載型の機械を導入しています。従来のMRIでは、どうしても空間解像度の低い画像だったのが、AIを搭載することで画像ノイズを除去。高精細な画像が可能となり、がんの浸潤具合がよく分かるようになりました。境界線も鮮明になり、診断の確信度が高まったことは、何よりも大きなメリットだと思います。

 さらに、MRエラストグラフィという技術も使用しています。これは、MRIで体内組織の弾性を画像化する技術で、肝臓や腎臓などの線維化の程度を測ることができます。線維化は老化や病気で起こる現象ですが、その程度を測ることで、臓器の機能診断と治療に役立てようというものです。

 臓器の線維化は、これまで生検によって測られてきました。この方法だと針を刺す必要があり、患者さんの苦痛も大きい。その上、ほんの数ミリ程度の組織を採取するだけでは、その臓器全体の線維化の程度を知ることはできません。このMRエラストグラフィなら、臓器全体の硬さを知ることができるので非常に有用性が高いと言えます。

―研究について。

  腹部画像診断に関する研究を行っています。従来の画像診断では、異変のある部分の形を見て診断をする「形態イメージング」が中心でしたが、高精細CT・MRIが導入されたことで超高精細イメージングが可能となり、これまでの形態診断では描出されなかった組織や病変の微細構造の解明などの研究も増えてくると考えています。

 また、それぞれの臓器の機能や動きを測定する「機能・動態イメージング」も重要な研究テーマです。「機能・動態イメージング」では、エラストグラフィにより臓器の硬さを定量化することで線維化の指標にしたり、臓器内部の鉄、脂肪沈着の有無や程度を画像で診断することも可能です。また膵液や胆汁の流れる状態をMRIで可視化することで膵外分泌機能や胆道系機能診断への応用も行っています。

 今後は、超高精細イメージングと機能・動態イメージングの融合により、これまでの画像診断では得られなかった画像情報に基づいた個別化医療へ進んでいくと思います。

―医局の今後の展望は。

  もう少しマンパワーが欲しいですね。人材不足は、山口県全体のどの診療科も課題です。人材を確保できれば、さらに研究にも力が入れられるのではないかと思っています。

 また、今後の画像診断には、AIの導入も必要不可欠なものとなるでしょう。私たちは毎日膨大な数の画像を読影していますが、実際に迅速な治療や対応を必要とするものと、特別な処置は必要なく、経過観察で済むものがあります。

 近い将来、後者の読影についてはAIが診断補助を行うことで、診断効率と精度が向上することを期待しています。

国立大学法人 山口大学大学院医学系研究科 放射線医学講座
山口県宇部市南小串1―1―1
☎0836―22―2111(代表)
http://ds.cc.yamaguchi-u.ac.jp/~radiants/

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