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信頼関係の構築を基に地域医療のレベル向上を

信頼関係の構築を基に地域医療のレベル向上を

富山大学医学薬学研究部眼科学講座  教授(はやし・あつし)
1988年大阪大学医学部卒業、同眼科入局。
米ジョンズホプキンス大学ウィルマー眼研究所リサーチフェロー、
大阪大学医学部眼科学内講師、
米カリフォルニア大学サンフランシスコ校眼科特任准教授を経て、
2007年から現職。2019年4月から富山大学附属病院病院長兼任。


 地方大学は地域医療の「最後の砦(とりで)」でなくてはならない―。強い思いを胸に改革と地道な活動で大学内外の眼科医療の向上に注力してきた。教授就任から間もなく12年、近隣大学との積極的な交流やヒト型ロボット・ペッパー(Pepper)による業務効率化など柔軟な取り組みにも注目が集まる。

―これまでの取り組みについて教えて下さい。

 2007年に教授に就任した時、地域医療の最後の砦として臨床を充実させること、そして県全体の眼科のレベルを上げること、この二つを宣言しました。

 以前は、臨床よりも比較的研究色が強い講座だったようです。しかし、富山県唯一の大学病院としては専門分野をくまなくカバーしかつ最高レベルの医療を提供しなくてはならないと考え大きく舵を切りました。

 組織の環境や体制を整えるのと同時に、まず着手したのは、県内の眼科の開業医の先生のところに足を運び〝顔の見える関係〟を作ることでした。患者の紹介をただ待つのではなく積極的に働きかけ、紹介をしていただいたらしっかり治療をして紹介元にお返しする。その積み重ねで信頼関係を築くことが最も大切だと考えました。

 県全体の眼科のレベルを上げる取り組みとしては、開業医の先生方との勉強会をはじめ、ほぼ毎月実施しました。休診にしなくても参加できるよう工夫した点なども大変好評です。

 また、県内だけでなく北陸全体の連携のために医療従事者向けの「EYE LiNK (アイリンク)」というフリーペーパーを9年前から定期的に発行し、毎回約3000部配布。講座からの情報発信だけでなく、北陸3県の4大学と開業医などさまざまな方に寄稿していただき、各施設での取り組みを共有しています。

 同じく北陸3県4大学の眼科では、年に一度、発表や討論をする勉強会も開催。この会ではあえてテーマを臨床ではなく研究に絞り、自由な発想で意見交換をしています。


―取り組みの成果は上がっていますか。

 一つは手術の安全システム向上。顔認証や眼内レンズの入れ間違い防止などです。全手術をITシステム上で監視。術後の診察内容はスマホに自動で送信します。集中管理で効率性を高めます。

 就任から11年で患者数は大きく増加し紹介患者はその内の9割です。築いてきた信頼関係の証と言えるかもしれません。

 症例数が増えれば、若手医師の教育の機会も増えるので、結果として教育効果も上がります。臨床面では眼科の専門分野を網羅し、各分野において高いレベルで治療ができるようになりました。

 また、県全体のレベルも勉強会などを通じて向上していると感じています。開業医のレベルが上がれば当然大学に要求されるレベルも高くなり、それに応えるべくさらにレベルを上げていく。非常に良い循環です。


―今後の取り組みは。

 地方では眼科医の高齢化が進んでおり、若手の育成が急がれます。一方、地方大学では入局者が少ない分、指導を手厚く受けられ、一人ひとりが多くの臨床経験を積むことができる強みもあります。

 2019年から術中に術者が顕微鏡を通して見ている映像を、手術室にいる他の医師も同時に3Dで見られるビジュアルシステムを導入。これは手技の質向上に大きな効果をもたらしています。

 今後は臨床研究にも力を入れていきたいと思っています。臨床医であり研究者でもある医師を育てることは長年の夢です。また、医療現場の人手不足は全国的に深刻な問題ですが、当科では2年前からヒト型ロボット・ペッパーに術前説明などをさせ、業務の効率化を図っています。

 人間による伝達漏れの防止、また患者さんにとっては相手が機械であるため不明な点があれば遠慮なく再生して聞き返せます。今や現場の看護師にとってもペッパーは無くてはならない存在です。情報の内容などについてはさらなる改良を重ねていきたいですね。


富山大学医学薬学研究部眼科学講座
富山市杉谷2630
☎076―434―2281(代表)
http://www.med.u-toyama.ac.jp/ophth/

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