信州大学医学部 小児医学教室 地域連携や先進医療でがんの子どもを守る

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中沢 洋三 教授(なかざわ・ようぞう)
1996年旭川医科大学医学部卒業。
米ベイラー医科大学博士研究員、国立病院機構信州上田医療センター、
信州大学医学部附属病院小児科講師などを経て、2016年から現職。

 信州大学医学部小児医学教室は、長野県の小児医療の中心的存在であり、強固な地域連携を構築している。先進医療にも積極的に取り組んでおり、2019年には中沢洋三教授の提案で、遺伝子検査による2次がんの早期発見・予防を目的とする「HOPEFUL外来」が開設された。

―診療面の特徴は。

 当教室は「長野県内の子どもの診断・治療・フォローアップは県内で完結させる」ことを目標に掲げています。そのため、救急医療、高度・先進医療、プライマリ・ケアなど、全方位に対応しています。

 また、長野県全域の医療機関と連携体制が構築されているのも特徴の一つです。当教室は県内で小児科を標榜しているほとんど、約50の病院に医師を派遣しており、一つのネットワークでつながっています。重症や難治の患者さんは、当教室と長野県立こども病院が症状に応じて受け入れ、退院後は地元の医療機関が診ていきます。この強固な連携システムは、県内で医療を完結させる強みになっています。

―「HOPEFUL外来」が新設されました。

 2019年8月に開設した「HOPEFUL外来」は、小児がん経験者の遺伝子検査を行い、その結果を2次がんの早期発見や予防に役立てることが目的です。

 数年前、私が診ていた小児がんの患者さんが、若くして再びがんになりました。当時、放射線治療などの影響によって2次がんになりやすいことは分かっていましたが、その患者さんは強い治療は受けていません。これには大きなショックを受けました。

 その後、海外の論文で遺伝子の素因もあることを知り、遺伝子検査によるフォローアップを考えました。もちろん、遺伝子の扱いは非常にデリケートな問題ですので、開設までには学内で多くの協議を重ねました。

 外来に来て遺伝子検査を希望する人に対しては、慎重に何度も説明して、同意を得てから血液検査に至ります。対象となるのは、早期発見・予防のガイドラインが定まっている遺伝子のみに限定。患者さんを長期にわたってフォローするために必要なものを調べています。これまで検査を受けたのは10人程度ですが、今後は周知する範囲を徐々に広げて、多くの人を受け入れたいと思っています。

―後進の育成、今後の展望について。

 本人たちの希望を優先させたいと考えています。5年後や10年後を見据えて、取り組んでみたい分野や目指したいポジションがあるなら、一人前になった時点で快く送り出したい。

 仮に小児科をやめることになっても構わないですし、小児科の経験を持って他の分野に進出することも推奨しています。ただし、できることなら小児科専門医に加えて、サブスペシャリティを身に付けてから、羽ばたいてほしいですね。

 教授に就任してから3年半、後進の育成に関する私の方針は常に話してきましたし、周囲の理解も得ています。しかし、教室の人員は不足気味で、実際に後進の希望をかなえるのが難しい側面もあります。県内に十分な小児医療を提供するためにも、今後はさらに多くのスタッフを集められるよう努力していきます。

 研究面では、自分が治療したいと願う患者さんのための研究を、さらに続けたいと思っています。私は13年間、遺伝子細胞治療に特化して、迷うことなく研究してきました。おかげさまで、ここ数年は各方面から支援を受けられるようになり、治験に進んだものもあります。

 また最近では、研究としては初期段階ですが、東芝と共同で「がん指向性リポソーム技術」を開発しました。スタッフにも、自分のテーマを見つけて、日本の医療の最前線を走るような研究に参画してほしいと願っています。

信州大学医学部小児医学教室
長野県松本市旭3─1─1
☎️0263─35─4600(代表)
http://www.shinshu-u.ac.jp/faculty/medicine/chair/i-shoni/

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