九州医事新報社 - 医療・医学の〝今〟を伝えて62年

信州大学医学部附属病院 病院長 川真田 樹人

信州大学医学部附属病院 病院長  川真田  樹人

 明けましておめでとうございます。多くの病院で新型コロナ感染症(COVID―19)との闘いが続いており、COVID―19病棟で新年を迎えた医療関係者も多くいらっしゃると思います。皆さまのご尽力に心より敬意を表します。

 当院でも長野県内の重症患者さんを受け入れ、治療とケアを行っており、関係する職員の献身に頭が下がります。このような状況下で、2021年の年始のあいさつは、新型コロナ感染症に関するものばかりだと思います。

 その昔、ツツガムシ病から「つつがなく」というあいさつ語ができたように、ウィズコロナの時間が長く続けば、やがて「コロナなくお過ごしでしょうか」というような言葉が生まれるかもしれません。

 と、ここまで書いたところでネットで調べてみると、実は、「つつがなく(恙なく)」という語は、ツツガムシ病を語源とするのではなく、古代中国には恙(つつが)という霊獣がおり、虎や豹よりも凶暴で、人間を食い殺すと恐れられていたそうです。(https://ja.wikipedia.org/wiki/ツツガムシ)

 そしてこの霊獣の名前から「恙なく」という用語がすでに派生していたそうです。その後、何らかの伝播性疾患で致死率が高いこの疾患を「恙虫」という妖怪によるものと考え、「ツツガムシ病」と名付けたそうです。時を経て、「ツツガムシ病」はダニによる感染症だと判明し、このダニを「ツツガムシ」と名付けました。

 現在では、「ツツガムシ病」は病原菌リケッチア(Orientia tsutsugamushi)を保有するダニの一種ツツガムシの幼虫に媒介される感染症で、発熱、刺し口、発疹(紅斑)で診断され、初期のテトラサイクリン系抗菌薬が有効で、昔のように恐れられた病気ではなくなっています。 

 人類は得体が知れない病気に恐怖を感じますが、明確な診断基準が示され、有効な治療法と予防法が確立されると恐怖が減じ、医療従事者を含め、社会全体は落ち着きを取り戻します。私たち現場の医療者は、1人でも多くのCOVID―19患者さんを救命することで、COVID―19という得体の知れない感染症が、社会に与える恐怖を減らす仕事をしているのだと思います。

 ワクチンや有効な治療薬の開発は、私たちの闘いを後押ししてくれる強い武器です。2021年、私たちが新たな武器を得て、人類がこの新たな感染症を克服する年になることを切に祈って、新年のあいさつとさせていただきます。

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