信州大学医学部附属病院 病院長 本田 孝行

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 あけましておめでとうございます。この年齢になると、時がたつのが早く、数日前に昨年のあいさつをしたように感じます。年を重ねるごとに1日、1年が短くなることは誰もが経験することでしょう。小さい頃は時間が進むのが遅く、特に授業が長くて、1学期が今の数年にも感じました。時間の流れを感覚的に捉えると、人生の中間点ははるか昔20代前半にあったのかもしれません。若い頃と今と何が違うかと考えると、覚えられる知識量の差に気が付きました。知識をたくさん取り入れられる時期は時間を長く感じ、知識が入らなくなるに従い時間は早く過ぎ去っていくのかもしれません。この理論は成り立つのか、ここ数年、老体にむち打って実験してみました。病院経営に必要な知識を覚え込もうと少しまじめに勉強しました。しかし、感じる時間の早さは変わりませんでしたので、私の理論が正しいとすると、いまさら勉強しても身に付かないということになります。

 それでも、少し勉強した成果を披露してみます。総医療費は国内総生産(GDP)に影響されます。1人当たりのGDPが平均年収に近いと説明されると、GDPは身近な指標になります。すなわち、日本のGDPは日本人すべての人が得た給与の総額と大ざっぱに考えられます。最近、日本のGDPの伸びは1%未満で、医療費の伸びが2%弱ですので、日本人の総収入に占める医療費の割合は増加しています。政府はこのGDPに占める医療費の割合を押さえ込もうとしていますが、現在のところうまくいっていません。

 GDPが増加しなければ、お財布に余裕がないので、医療費が増える可能性はありません。総医療費がGDP頼りであることは他の国も同じで、日本の失われた30年は医療費にも大きく影響しています。医師の働き方改革において、医師の業務を減らすためにタスクシフトが注目されていますが、総医療費という観点で考えると、タスクシフトのための資金は用意されていません。人件費が増えなければ、医師の収入を減らして業務を行う人の給与にしなければなりません。人件費を増やす場合も、総医療費が同じであれば他の経費を削らなければなりません。医薬品・材料費の診療経費を下げるか、設備投資を抑えるのかとなります。

 今後の高額医薬品、先進医療機器導入などを考慮すると、人件費を増やせる余裕はありません。病院では、医師、看護師をはじめとする人材不足は明らかですが、人件費を増やさずに病院を経営できるのか、うまい処方箋が見えてきません。日本のGDPが増えない限り、病院経営は楽にはならないようです。脈絡なく、思い付くことを書きました。今年もよろしくお願いいたします。

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