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依存症の最先端治療を発信し続ける

依存症の最先端治療を発信し続ける

独立行政法人国立病院機構
院長(ひぐち・すすむ)

1979年東北大学医学部卒業。
米国立衛生研究所留学、久里浜医療センター臨床研究部長、同副院長などを経て、2011年から現職。
藤田医科大学医学部客員教授、慶應義塾大学医学部客員教授兼任。

1960年代から、アルコール依存症治療の全国拠点機関としての役割を担ってきた久里浜医療センター。近年急増するインターネット依存症、患者数の増加が懸念されているギャンブル依存症など、専門的な診療機関としての取り組みに迫った。

─病院の特徴は。

 国のアルコール依存症に対する国策の一環として、1963年にわが国初のアルコール専門病床を備えて以来、アルコール医療の中心施設として診療を行ってきました。1989年には、世界保健機関(WHO)のアルコール関連問題研究・研修協力センターとして指定を受け、国際的な研究活動も積極的に行っています。

 現在ではアルコール医療に加え、精神医療分野として各種精神疾患に対する総合的診療、上部・下部消化管の内視鏡診療を行っています。2012年からは神奈川県の認知症医療中核病院の指定を受け、認知症の早期発見、早期治療に取り組んできました。また、2011年には、インターネット依存専門診療を開設、全国から多くの患者さんが来院されています。

─依存症が専門です。

 確実に患者数が急増しているのが、インターネット依存症です。専門的な診療施設や専門医が少なく、当院へ患者さんが集中する状態が続いています。

 日本でのカジノ解禁が目前に迫る中、2018年に「ギャンブル等依存症対策基本法」が可決されたことは、記憶に新しいと思います。今後、カジノが合法化されれば、ギャンブル依存症の患者が増加することが予想されます。

 いずれも「依存症」ですから、その治療法は類似する部分が多くあります。治療は主に、患者さんに対する教育、個人カウンセリング、そして認知行動療法を行っていきます。

 アルコール依存症に関しては有効な治療薬が数種類存在していますが、インターネット依存症については未知の領域です。しかし私は現在のところ、アルコール依存症治療薬の「脳内オピオイド神経をブロックし飲酒欲求を制御する」というメカニズムは、インターネット依存症にも効果があるのではないかと考えています。

 ただし、インターネット依存症に治療薬があったとしても、その患者さんの年齢層がかなり低いということが治療のネックとなるかもしれません。例えば、当院でインターネット依存症の治療を受けている患者さんの約9割はオンラインゲームによるもので、小中高生などの若年層が多いのが特徴です。

 他の国では、オンラインゲームによる大きな健康・社会問題が起きていることから、オンラインゲーム接続に年齢制限があります。しかし、日本にはまだありません。インターネットやオンラインゲームが好きな子どもは多く、当たり前に存在しているインターネットを使わない生活は考えられないでしょう。

 ただのゲーム好きと依存症の大きな違いは、それによって食事や睡眠など、生きる上で大切にされるべきことがないがしろになるという点です。子どもたちが学校に行かなくなるなど、本来の社会生活上の機能が働かなくなるとすれば、非常に大きな問題なのです。

─今後は。

 まずは経営の健全化、そして医療の質を担保し、この分野における世界水準の医療を提供したいと考えています。ギャンブル依存症やインターネット依存症に関する調査研究機関という役割もあり、依存症に関しては他の機関への情報発信、コンサルテーションなども担っていきたいと考えています。

 特にインターネット依存症への医療は、まだ始まったばかりです。非常に大きな社会問題であることを社会へ啓発しながら、適切な治療を受ければ改善できることを示していきたいと考えています。

独立行政法人国立病院機構 久里浜医療センター
神奈川県横須賀市野比5─3─1
☎046─848─1550(代表)
https://kurihama.hosp.go.jp/

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