九州医事新報社 - 医療・医学の〝今〟を伝えて62年

何が最良の治療なのか? 考える外科医を目指そう

何が最良の治療なのか? 考える外科医を目指そう

・乳腺内分泌外科学) 五井  孝憲 教授(ごい・たかのり)
1989年大阪医科大学卒業、福井大学医学部附属病院第一外科入局。
米タフツ大学留学などを経て、2016年から現職。

 モットーは質の高い、安全かつ確実な手術を行うこと―。福井大学第一外科()は、カバーするすべての疾患において全国平均を上回る治療成績を維持。「一人一人の患者をしっかりと診て最善の治療に努めた結果です」と五井孝憲教授は語る。その熱意は新たな治療法の確立など、臨床、研究の両面でなお高まり続けている。

―方針は。

 前身の福井医科大学が1980年に開学しておよそ40年。医学生の教育と福井県の医療への貢献を目的に開講した当第一外科は、マンツーマンを基本とした指導のもとで多くの専門医、指導医、技術認定医を育ててきました。

 先輩から後輩へと技術だけではなく、医師としての大切な心構えも受け継がれています。そのよき伝統が実り、私たちの取り組みを発信する場は「福井から世界へ」と広がっています。

 私たちが診療する領域は非常に幅広いのです。悪性疾患はもとより、胆石症や虫垂炎といったコモンディジーズを含む良性疾患、救急医療、そして小児の疾患まで対応します。というのも、われわれは「外科のジェネラリスト」を育てたいと考えているからです。特定の臓器を掘り下げる前に、まずは数カ月ごとにさまざまな疾患について指導医のトレーニングを受けます。

 技術的なこと、学問的なこと、多様な専門分野の医師とのつながりなど、さまざまな面でバランス感覚に優れた外科医の育成につながると考えています。

 術前カンファレンス、術後の報告会や検討会には必ず医局の全員が出席して意見を交換します。疑問点や改善策などを出し合い、その経験がさらに「1人で診る力」を高める。福井県および北陸地方の医師にとって大事な能力です。

―「(高温)温熱化学腹膜潅流療法(H-HIPEC)」について。

 大腸がんに対する化学療法は薬剤の種類も増え、この十数年で大きく発展しました。ただ、がんが腸を突き破ってお腹に広がる「腹膜播種」という転移については、化学療法、あるいは手術でも、まだ治療法が確立されていない状況です。

 第一外科では、大腸がんの腹膜転移に対して「(高温)温熱化学腹膜潅流療法(H-HIPEC)」を採用し、症例を積み重ねてきました。

 術中の温熱化学療法によって、腹膜内に残るがん細胞のアポトーシス(細胞死)を誘導できる可能性があります。また43度以上の加温が、がん幹細胞に影響を及ぼすとの報告もあり、根治につながるのではないかとも言われています。

 米国や英国のガイドラインでは「腹膜切除+温熱化学療法」が大腸がんの腹膜播種に有効だと示されており、ラテンアメリカの国々でも標準治療として認められています。

 一方、日本ではまだ保険適用外です。国内で実施している医療機関は、福井大学医学部附属病院を含めて8カ所程度だと思います。施設が限られているため北海道から九州まで、各地から患者さんがいらっしゃいます。私たちとしては引き続き症例のデータを収集し、腹膜播種の治療に貢献できればと思います。

―最後にメッセージをお願いします。

 どんなに医学が進歩しようとも、すべての疾患を克服することはできないという現実があります。だからこそ私たちは日々学び、課題を見つけ、解決するための方法論を考え続ける必要があります。

 熱意あふれる研究者であり、人格、知力、技術を兼ね備えた臨床医でもある。そんな人材の輩出に力を注いでいます。

 そのために、若い人たちが目を輝かせて「第一外科で学びたい」と思ってもらえる講座でありたいと思っています。私たちが診療や研究に打ち込む姿で楽しさややりがいを伝え、独自の「ブランド」を確立したいですね。


福井大学医学部第一外科(消化器・乳腺内分泌外科学)
福井県吉田郡永平寺町松岡下合月23─3
☎0776─61─3111(代表)
https://u-fukui-geka1.jp/

この記事を読んだ方は他にこんな記事も読んでいます

最新の記事情報が取得できます

Twitter

「いいね!」ボタンを押すと、最新情報がすぐに確認できるようになります。

Instagram

フォローする」ボタンを押すと、最新情報がすぐにツイート上で確認できるようになります。

コメントはこちらから

メニューを閉じる