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低侵襲に固執しない患者に合った適正な治療を

低侵襲に固執しない患者に合った適正な治療を

社会福祉法人恩賜財団  済生会支部    血管外科
三井  信介 主任部長(みつい・しんすけ)
1984年九州大学医学部卒業、同第二外科入局。
新日鐵八幡記念病院(現:製鉄記念八幡病院)血管外科部長、
社会保険小倉記念病院血管外科部長、製鉄記念八幡病院血管病センター長などを経て、
2015年から現職。

 食生活の欧米化や高齢化を背景に、動脈硬化を原因とする疾患が今後も増加すると見込まれているという。「血管外科」がある福岡県済生会八幡総合病院で、三井信介主任部長に聞いた。

―血管外科の特徴は

 ここ済生会八幡総合病院の血管外科が再開したのは、2015年に私が赴任してからです。当院の血管外科では腹部の動脈から下、それと手足の血管を担当。病気としては、血管が膨らむ動脈瘤、静脈瘤と、血管が詰まる閉塞性動脈硬化症が中心。特に、閉塞性動脈硬化症の患者さんが非常に増えています。 北九州市内には、小倉記念病院(小倉北区)などにも血管外科があり、小倉エリアの患者さんは小倉記念病院、八幡から遠賀までのエリアと中間市、直方市などの患者さんは当院と製鉄記念八幡病院へと集まっているのが現状です。高度な専門性と、患者さんの通いやすさといった面を維持するためにも、今後も分担、集約して、診療していけたらと考えています。

 血管外科では、他の疾患が併存する患者さんを多く診療します。例えば、糖尿病の合併症で壊疽(えそ)が起きている方。私が製鉄記念八幡病院の前身である新日鐵八幡製鐵所病院に赴任した1990年代半ばは、閉塞性動脈硬化症で手術を受ける患者さんのうち、壊疽がある人は2割程度でした。一定の距離歩くと足がしびれたり痛みが出たりする間歇性跛行(かんけつせいはこう)を訴えている人が多かったですね。

 ところが今は、閉塞性動脈硬化症の患者さんのうち7割に壊疽があります。糖尿病や透析が必要な腎不全を合併していて動脈硬化が進んでいる患者さんであっても、手術をしている状況です。病変の性状や患者さんの状態を考えて低侵襲な「血管内治療」を選択することも増えています。

―下肢静脈瘤の手術が最近話題です。

 実は、必ずしも手術を要するわけではありません。だるかったり湿疹ができたりといった症状がある人はもちろん手術しますが、不快な症状がなく、足の血管にこぶのようなふくらみがあっても「気にしない」という方であれば、治療をする必要はないと考えています。

 治療が必要かどうかの見極めと、するのであれば適切な治療法を選択することが肝心で、そこは、私たち専門医の役割です。地域のクリニックの先生方には、「この程度で紹介してもいいのか」などと逡巡することなく、患者さんを送っていただきたいとお願いしています。

―動脈瘤はステントグラフト内挿術が主流でしょうか。

 ほとんどの動脈瘤は自覚症状がありません。今はエコーやCTが発達していることもあり、他の病気の検査の段階で見つかることが多いですね。この動脈瘤についてもすべてのケースで手術をするわけではありません。サイズはもちろん、患者さんの全身状態、年齢も考慮して治療法を決めていきます。

 動脈瘤の治療では、今、開腹をしないステントグラフト内挿術が主流になっています。傷が小さく、治療時の患者さんへの負担が少ないメリットがあります。ただ、ステントグラフト挿入後、動脈瘤が小さくならず、逆に大きくなり続けて破裂することもあり得ます。体に優しい治療が、すべての人にベストがどうかは、実は分からないのです。

 「低侵襲」は確かにキーワードではありますが、患者さんのADLや生命予後を考えると、外科手術をしたほうが良い場合もあります。ステントグラフトがいいのか、開腹手術のほうがいいのかなど、きちんとした判断をすべきです。

 今は、麻酔や術後管理も安定しており、以前に比べて手術のリスクは低くなっています。年齢に関係なく、それぞれの患者さんに合った適正な評価をすることが、何よりも大切ではないでしょうか。


社会福祉法人恩賜財団  済生会支部  福岡県済生会八幡総合病院
福岡県北九州市八幡東区春の町5―9―27
☎093―662―5211(代表)
http://www.yahata.saiseikai.or.jp/

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