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低侵襲で機能保全が高い内視鏡で患者のQOLを維持

低侵襲で機能保全が高い内視鏡で患者のQOLを維持

鹿児島大学大学院医歯学総合研究科 耳鼻咽喉科・頭頸部外科学
講師(おおほり・じゅんいちろう)

2000年熊本大学医学部卒業、鹿児島大学医学部耳鼻咽喉科学教室入局。
鹿児島大学大学院医歯学総合研究科耳鼻咽喉科・頭頸部外科学助教などを経て、
2011年から現職。

 内視鏡は、今やあらゆる領域の手術に用いられ、頭頸部の手術でも導入が進んでいる。この分野での内視鏡手術の専門家である鹿児島大学の大堀純一郎氏を訪ね、頭頸部での内視鏡手術のメリット、今後の展望などを聞いた。

―耳鼻咽喉科における内視鏡の導入は。

 耳鼻咽喉科の手術では、消化器系の内視鏡とは異なり、針状鏡という、それこそ細い針のような形をした内視鏡を使っています。

 今では大きな腫瘍を除いて、副鼻腔炎をはじめとする鼻に関わる手術のほとんど、さらには喉頭や咽頭、耳の手術でも、内視鏡が多く用いられるようになっています。

 以前であれば、咽頭がんはかなり大きくなって症状が出ないと、治療対象になりませんでした。現在は、初期の段階で発見でき、内視鏡で喉の粘膜を切除できるようになっています。

―内視鏡を使うメリットは。

 何よりも、低侵襲であることです。例えば耳の手術は、以前は耳の後ろを切って、中を開けて、手術をしていました。今では耳の穴の中へ極小のレンズを入れて、外でモニターを見ながら診察したり手術をしたりします。鼻も同様です。大掛かりな手術をしなくてもよくなったので、患者さんの負担が減りますし、QOLの維持につながります。

 最近は、内視鏡をはじめ医療機器の発達がめざましく、高精度、高画質になってきています。4Kカメラも出てきて、鮮明な画像でモニターに映し出される。すると肉眼で見えなかった微小な病変が見つかることもあり、ごく初期の段階での対応も可能です。

 かつては手術者だけしか見られなかった手術の様子を、今では手術室内の大きなモニターに映し出すことで、看護師などのメディカルスタッフと情報を共有できます。鮮明な映像は若い医師の教育にも非常に有効です。

 機能温存も内視鏡手術のメリットだと言えます。例えば、下咽頭がん。昔であれば、喉頭ごと全部取ってしまって、「声は失うけど、食べ物は食べられます」という手術が多かった。それが内視鏡を使うことで声を出す喉頭を残したまま、病変だけを取り除くことができるようになりました。嚥下(えんげ)の機能保全も内視鏡のほうがメリットが大きいと思います。

 デメリットは、一般的な内視鏡は3Dではないので奥行きを探りながら操作しなければならないこと。ただ3D内視鏡も出てきていますので、やがて解決されるものとは思います。

―今後の展開は。

 将来的に期待されているのは、手術支援ロボット「ダビンチ」の導入です。コンパクト化が進み、硬かったロボット鉗子(かんし)の先が少し曲がって、狭い場所にも入っていけるようになっています。喉や鼻、耳に入れていけるようになると、手術が格段に向上するものと期待しています。

 頭頸部がんは、がん全体の5%ぐらいしかありません。希少がんの範囲を出ない症例数なので、日本全体で症例を集めていかなければなりません。

 また耳鼻咽喉科では、ダビンチ利用はまだ保険適用ではありません。私はダビンチ操作のトレーニングは終了しているのですが、保険適用ではないので患者さんに簡単にはお勧めできない状況です。しかし、ロボット支援手術は現実味があり、医師としてのスキルは常に磨いておかなければなりません。

 耳・鼻・咽喉の病気は、患者さんのQOLを妨げる場所で発症します。聴覚や味覚、臭覚、発声と、治療の結果が如実に表れます。耳の手術後、聴力検査で患者さんが聞こえないとなれば、成功とは言えません。

 今後も、内視鏡やロボット手術など技術を積極的に活用することで、患者さんのQOLの向上に貢献したいと考えています。


鹿児島市桜ケ丘8―35―1
☎099―275―5111(代表)
http://www.kufm.kagoshima-u.ac.jp/~ent/

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