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伝統を受け継ぎながら 時代のニーズに応えたい

伝統を受け継ぎながら 時代のニーズに応えたい

千葉大学大学院医学研究院泌尿器科学 市川 智彦 教授 (いちかわ・ともひこ)
1984年千葉大学医学部卒業。
米ジョンズホプキンス大学オンコロジーセンター研究員などを経て、2004年から現職。
千葉大学医学部附属病院遺伝子診療部部長、同副病院長(医療安全管理責任者)。

 教室の強みや伝統を守りながら、時代のニーズに応えるべく積極的なロボット支援下手術の実施、ゲノム医療の推進などに取り組んでいる市川智彦教授。泌尿器科領域における疾患の傾向や治療、人材の育成に関することまで、現在の状況を尋ねた。

―教室の特徴は。

 千葉大学医学部附属病院泌尿器科はがん患者さんの割合が大きく、当教室では前立腺がんをはじめ、腎細胞がん、膀胱がん、精巣がんといった尿路性器悪性腫瘍の基礎的・臨床的研究などに注力しています。

 また、シスチン尿症の原因遺伝子、男性ホルモンであるアンドロゲンに関する研究すべてを包括するアンドロロジー。さらに、男性不妊症の基礎的・臨床的研究、排尿機能に関する臨床的研究などに取り組んでいます。

 シスチン尿症に関連した情報は、国内の各地からここ千葉大学に集まるシステムが構築されています。各地の大学や医療機関と進めている共同研究プロジェクトにおいて、各機関から患者さんの血液を送っていただく、あるいは当泌尿器科を受診した患者さんについて、海外のデータとの比較も含めて解析を進めているところです。

 このシスチン尿症の研究は前教授で千葉大学名誉教授の伊藤晴夫先生のライフワークであった尿路結石と関連する研究分野です。脈々と受け継がれている当教室の「伝統」とも言えるものです。

―ロボット支援下手術の取り組みは。

 泌尿器科領域がカバーする腫瘍は、前立腺がん、腎細胞がん、膀胱がん、腎盂尿管がんなどです。

 ロボット支援下手術については、2012年に前立腺全摘除術が保険適用となりました。千葉大学病院では、同年から実施しています。

 2016年に腎細胞がんに対する手術が保険適用となりました。そして、2018年の診療報酬改定では、肺がん、食道がん、胃がん、直腸がん、膀胱がんなど、ロボット支援下手術の対象となる疾患が拡大されました。

 この診療報酬改定を受けて、膀胱がんに対する膀胱全摘除術もスタートしました。2018年におけるロボット支援下手術の実績としては、前立腺がんでは57件、小径腎腫瘍については48件でした。

 今後は、国内メーカーによる手術支援ロボットの開発なども推進されていくでしょう。これまでと比較して価格や運用費といったコストが低減できることで、この分野におけるロボット支援下手術のニーズや活用の幅は、ますます広がることが予想されます。

―男性不妊症の治療について教えてください。

 当教室は、初代教授の時代から男性不妊症の治療を重要なテーマと捉え、力を入れてきました。そのため、伊藤晴夫先生に続いて一般社団法人日本生殖医学会の理事長を務めています。

 体外受精を行っても妊娠に至ることができない。そうしたケースを対象とする治療として顕微授精の技術が発展しました。「運動している精子」のうちの1個を、卵子に直接注入する治療法です。一定程度の運動している精子が確認できれば、顕微授精で妊娠を目指すことができます。

 無精子症に対する治療など、妊娠できない要因にはさまざまなものがあります。生殖医療に関心をもつ若い医師たちが増えてくれればうれしいですね。

―「臨床遺伝専門医」としての活動は。

 遺伝性の腎細胞がんや男性不妊症に関わるカウンセリングを担当しています。

 千葉大学病院が「がんゲノム医療連携病院」に指定されていることもあって、遺伝性の腫瘍に対するカウンセリングのニーズも高まっていると感じます。また、高齢化に伴い前立腺がんや膀胱がんの患者さんは増加傾向にある。私たちの役割は、ますます重要になると思います。

千葉大学大学院 医学研究院泌尿器科学
千葉市中央区亥鼻1―8―1
☎043―222―7171(代表)
http://www.m.chiba-u.ac.jp/class/urology/

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