本書は、総勢75人が平和について考察するための書籍を紹介する書評集だ。
そもそも平和な社会とは何だろうか。
本書では「平和学において平和の概念は単に、戦争のない状態ではなく、暴力の克服として動態的に捉えられるようになっている」と提示する。
取り上げられた書籍は「暴力の根源を考える」「植民地と戦争」「情報メディアと文化的暴力」「日米安保と沖縄」といった14のテーマに分かれる。ナチスの研究者として知られるハンナ・アーレントの「暴力について」をはじめ、石牟礼道子「苦海浄土(新装版)」、上野千鶴子「ケアの社会学」まで幅広い。
単なるブックガイドに終わることなく、〝平和な世界〟実現へ向けた熱のこもった平和指南書になっているように感じた。
同学会会長を務めた最上敏樹の著書「人道的介入―正義の武力行使はあるか」の解説では、「戦争を肯定するかのような武力介入の根拠をなくすために本当に必要なのはつまるところ『かれら』ではなく『私たち』への介入なのだろう―」と読者自身が考えることの大切さを訴える。「人種主義、成長至上主義といった形をとって顕現する構造を変容しなければ、社会全体が和解することは難しいのだ」とも。
「医療」や「健康」と「平和」は、それがおびやかされて初めて大切さが真に理解されるという意味で並べて語られることも多い。
まもなく8月。夏休みの宿題として、100冊のうちのいくつかでも読み進めたいと考えている。
平和を考えるための100冊+α 日本平和学会編 法律文化社 285頁 2000円+税