九州医事新報社 - 医療・医学の〝今〟を伝えて62年

人的交流を広げ開かれた教室に

人的交流を広げ開かれた教室に

近畿大学医学部 脳神経外科学教室
髙橋 淳 主任教授(たかはし・じゅん)
1991年京都大学医学部卒業。同脳神経外科、
国立循環器病研究センター脳神経外科部長、京都大学医学部臨床教授などを経て、
2020年から現職。

 脳血管障害のエキスパートとして、若手教育やチームマネジメントに長年取り組んできた髙橋淳氏。新天地に赴任し、これまで培ってきた人脈と経験を、今後の教室運営にどう生かしていくのだろうか。

命をつなぐ医療をライフワークに

 脳血管障害・脳腫瘍・機能的脳神経外科を3本柱とする近畿大学医学部脳神経外科学教室。その4代目主任教授として赴任した髙橋淳氏は、「大阪南エリアの地域性も勉強しながら、早く慣れて仕事を広げたい」と語る。

 前任地は、脳卒中と心臓血管病の治療研究拠点である国立循環器病研究センター(国循)。計17年を過ごし、脳血管障害を専門に、脳卒中の治療と予防に尽力してきた。

 ライフワークの一つが、もやもや病。若いにもかかわらず脳の血管が詰まり、代償的に異常血管網が発達する指定難病で、小児慢性特定疾病でもある。異常血管からの脳出血をどう防ぐかが長年の懸案だったが、2001年から13年かけて全国22施設が共同研究を実施。データ解析まで含めると20年弱の歳月を費やし、バイパス手術が有効など八つの論文を発表した。その研究事務局にいながら、治療にも多数携わってきた。「引き続き研究を進め、南大阪の拠点になれればと思っています」

 妊産婦脳卒中との関わりも深い。発端は、2006年に奈良県内の病院で起こった事件。分娩中に脳出血を起こし受け入れを断られ続けた妊婦を、最終的に国循が引き受け、担当した。「残念ながら患者さんは後に亡くなりましたが、この件は大きな議論に発展。妊産婦脳卒中の全国調査に取り組んだのは、それがきっかけです」。今も日本産婦人科医会の妊産婦死亡に関する症例検討委員会に、脳の専門医として関わっている。

「多国籍軍」率いる経験を生かして

 国循では2014年から、脳神経外科部長としてチームをまとめてきた。「全国の大学から派遣され、後にリーダーとなる人材。6年半で67人と一緒に働きました。いわば多国籍軍です」。当時の運営コンセプトは、完全合議制。活動方針から患者の治療選択まで、全員で結論付けてきた。

 「教室の運営も、同じアプローチで進めたいと思います。そのためには、若い医師が自由に意見を言える土壌づくりをすること。それが私の役目です」

 今まで築いてきた人脈を生かし、外部との交流も広げたい考えだ。「より開かれた教室を目指したい。いずれ交換留学も実現できればいいですね」

これからの外科医 教育と働き方は

 カテーテル治療の発展などにより、1人が受け持つ手術件数が減少している脳外科領域。数をこなし上達するやり方は、もはや通用しないと言う。「特に開頭手術は学ぶほうも教えるほうも相当工夫しないと伝承は難しい。そこは考えてやっていきたい」

 もう一つ、気がかりなのが医師の働き方の問題だ。「脳血管障害で多い救急の現場では、医療の進歩とともに労働量は格段に増加。過重労働に向き合うには、マンパワーが必要です。診療実績を上げ、外部と交流して教室を活性化することで、若い人が集まるサイクルをつくりたい」。働き方の効率化も含め、危機感を持って取り組むと語る。

 若手に言い続けてきたのは、「自分たちの仕事は人の不幸と隣り合わせだ」ということ。「背後には、泣いている人がいる。誇りにはしても喜んでいい仕事とは思っていません」。だからこそ、病気になってしまった目の前の患者に、真摯(しんし)に向き合おう―。そんな心構えも伝えたいと願う。


大阪府大阪狭山市大野東377ー2 ☎️072ー366ー0221(代表)
https://www.med.kindai.ac.jp/nouge/

この記事を読んだ方は他にこんな記事も読んでいます

最新の記事情報が取得できます

Twitter

「いいね!」ボタンを押すと、最新情報がすぐに確認できるようになります。

Instagram

フォローする」ボタンを押すと、最新情報がすぐにツイート上で確認できるようになります。

Instagram did not return a 200.

コメントはこちらから

[contact-form-7 404 "Not Found"]
メニューを閉じる