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人材育成と情報発信で、社会に還元する

人材育成と情報発信で、社会に還元する

九州大学大学院医学研究院 外科学講座 麻酔・蘇生学分野 山浦 健教授(やまうら・けん)
1992年九州大学医学部卒業。九州大学病院麻酔科蘇生科助手
聖マリア病院、麻酔科辛島クリニック、福岡大学医学部麻酔科学教授などを経て
2019年から現職。

 この春、九州大学大学院麻酔・蘇生学分野に赴任した山浦健教授。同医学部卒業後に内外でさまざまな経験を積んで、自らの母校に戻ってきた山浦氏に、麻酔・蘇生学分野の現況や人材育成の方針などについて、就任直後の抱負を聞いた。

医療の最先端から最前線までを経験

 九州大学病院麻酔・蘇生学分野は1962年、初代古川哲二教授によって開講され、山浦健教授で5代目。山浦教授自身は、2代目の吉武潤一教授の時に医学生として学び、研修医として3代目の高橋成輔教授から指導を受けた。さらに、4代目の外須美夫教授の研究室にも所属し、先輩から「麻酔科医とはどうあるべきか」という、精神的なアイデンティティーの部分を学んできたという。

 「私自身は当初、救急や集中治療に進みたいと思い、外科からのアプローチを考えていました。しかし、外科の先生から『麻酔科からのアプローチがいいのでは』というアドバイスを受けたのが、麻酔科医を志すきっかけでした」

 その後、大学病院勤務や米国ウィスコンシン大学への留学、地域の基幹病院や麻酔専門のクリニックを経験。大小さまざまな規模の現場で、医療の最先端から最前線までを経験したことが、糧になっている。

 「世の中には優れた医師や研究者が数多くいます。学生たちにも好奇心を持って、積極的に外の世界に飛び出して、さまざまな経験を積み、その中で自分の専門性を高めていくように勧めています」

麻酔・蘇生学の現状と課題に取り組む

 麻酔とは、一時的な昏睡状態、あるいは仮死状態をつくり出すことで、必ず蘇生が伴う。現在の医療において、麻酔・蘇生学の役割は大きい。歴史的にも医療の進歩に伴い、外科から麻酔・蘇生学が分かれ発展し、その後麻酔科と内科・外科とが一緒になって救命救急医学が派生していったという流れがある。

 「麻酔は〝痛みを取り除くこと〟が基本であり、手術麻酔から発展したのがペインクリニックです。手術や外傷による急性痛、慢性痛、緩和ケアにおいてはがんに伴う痛みをどうやってコントロールするかが大きな課題です」

 しかし、中枢神経に関わる痛みのメカニズムはまだ解明されていないことも多い。心療内科とも連携しながら、あらゆる痛みを取り除く研究が進められている。

チーム医療の中で麻酔科医の役割は

 安全で高度な医療を提供するために、チーム医療においても麻酔科医は重要な役割を果たしている。

 「予期せぬことが起きるのが外科手術ですから、どのような状況でも決してパニックにならずに冷静でいること。そのためには、手術計画に基づいた入念な準備が必要です。よく『慌てず、急げ』と言うのですが、日頃の準備とトレーニングを怠っていると、そこに焦りが生まれます。そして麻酔をする上での基本的な姿勢は、迷った時にはより安全な方向へかじを切ることが大切です」

積極的に情報を発信する人材を育成

 「大学および大学病院は税金をはじめ社会から大きな投資を受けています。臨床、教育、研究の各分野で、社会に還元する責任があると考えています」

 その責任を果たす中で、山浦教授が特に力を入れたいと強調するのが、次代の人材育成ができる教育者の育成だ。ただ麻酔科では、かつて臨床医が不足し、臨床経験が豊富であることが重視されてきた。

 「今では、臨床や研究を通じて得られた経験や知見を、積極的に情報発信できる教育者の育成が、大きな責務となっています。今後は人材と情報発信の両面で社会に還元できるように、組織、環境を整えていきたいと考えています」

九州大学大学院医学研究院 外科学講座 麻酔・蘇生学分野
福岡市東区馬出3-1-1 ☎092-641-1151(代表)
https://www.hosp.kyushu-u.ac.jp/

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