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人工内耳手術の豊富な実績で 道内の聴覚診療の先端を担う

人工内耳手術の豊富な実績で 道内の聴覚診療の先端を担う

 耳鼻咽喉科学講座
高野 賢一 教授(たかの・けんいち)

2001年札幌医科大学医学部卒業。
米イェール大学留学、札幌医科大学医学部耳鼻咽喉科学講座准教授、
同附属病院先端聴覚医療センター長などを経て、2018年から現職。

 札幌のほぼ中心部に本部を置く札幌医科大学は、1950年に設置。2020年に70周年を迎える。耳鼻咽喉科学講座は開学と同時に開講した歴史ある教室。特に聴覚の領域で北海道における中心的役割を担っている。同講座を率いる高野賢一教授に、現状と今後の取り組みを聞いた。

―教室の特徴は。

 42歳で教授に就任しました。教室全体が若々しく活気に満ちて勢いがあります。手術件数も非常に伸び、メンバー全員が精力的に臨床や研究に取り組んでいます。

 私はもともと生物学に興味がありました。高校時代に生体肝移植を行っている教授の講演を聴く機会を得て、「これからの外科は切除するだけでなく移植することによって患者の命を救う新しい時代を迎えている」という話に感動し、医学部に進みました。

 その私が現在、人工内耳の移植などを行っていることは、高校時代の志を貫徹したようで、感慨深いものがあります。

 耳鼻咽喉科は急性、慢性、悪性、アレルギー、感染症など疾患のバリエーションが多く、かつ手術も顕微鏡を使った繊細なものから頸部のがんを摘出するダイナミックなものまで幅広いことが特徴です。

 耳鼻咽喉科医の数が十分とは言えない北海道では、まず幅広い疾患に対応できる基礎的な診療能力をしっかり構築し、その上で専門能力を高めていくことを人材育成のテーマにしています。

 そのため他の医療機関にも積極的に出向き、さまざまな臨床経験を積むことを教育のコンセプトにしています。実際、私もそのようにして、これまで腕を磨いてきました。

―人工内耳埋込術で多くの実績があります。

 札幌医科大学では、1988年に人工内耳埋込術を開始。それ以降、現在までに約400例の実績を重ねてきました。

 耳は鼓膜から外側を外耳、内側を中耳、さらに奥の側頭骨内を内耳と呼びます。ここには聴覚に関与するカタツムリに似た形の蝸牛(かぎゅう)、平衡感覚をつかさどる三半規管などがあり、外耳道から入った音声は鼓膜を振動させ、中耳にある耳小骨と呼ばれる骨を通って蝸牛に伝わります。この刺激は蝸牛下部のコルチ器にある有毛細胞によって電気信号に変換され、聴神経を伝わり脳に到達。音声として認識されます。

 有毛細胞のダメージなど、蝸牛を原因とする難聴の改善は困難です。蝸牛の機能を代替する装置を内耳に埋め込み、そこへ体外装置で集音・変換した電気信号を送り、聴神経を刺激して脳に伝えるのが人工内耳埋込術です。

 補聴器の効果が得られない人に対する有力な聴覚獲得法として、世界で広く普及している人工臓器の一つ。当教室の主要テーマでもあります。より低侵襲で確実な手術を目指し、かつ良好な聴取成績が得られるよう、言語訓練など術後のリハビリテーションの研究にも力を注いでいます。

―今後については。

 北海道は広く、診断や治療には地域差ができてしまいます。この解消を目指して、札幌医科大学附属病院に先端聴覚医療センターを開設し、情報やマンパワーの集約に努めています。

 加えて、現在は遠隔医療にも取り組んでおり、札幌まで出向かなくても、人工内耳のマッピングや言語訓練などができるといった、より患者に寄り添った医療環境の実現を目指していきたいと思っています。

 高齢者の増加に伴い難聴に悩む人は増えています。最近は認知症との関連も注目されており、国も本格的な取り組みに乗り出す構えです。

 今後、細胞レベルから行う内耳保護および再生研究を含め聴覚医療のさらなるレベルアップを目指し、道民の期待に応える医療の提供に努めます。

札幌医科大学医学部 耳鼻咽喉科学講座
札幌市中央区南1条西16―291
☎011―611―2111(代表)
https://web.sapmed.ac.jp/otol/

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