九州医事新報社 - 医療・医学の〝今〟を伝えて62年

京都大学大学院医学研究科 外科学講座 乳腺外科学 世界レベルの診療と診断治療の開発

京都大学大学院医学研究科 外科学講座 乳腺外科学 世界レベルの診療と診断治療の開発

教授(とい・まさかず)
1982年広島大学医学部卒業。同大学医学部附属病院、英オックスフォード大学分子医学研究所留学、
都立駒込病院、東京理科大学総合研究機構DDSセンターなどを経て、2007年から現職。

 日本女性の乳がん罹患(りかん)率は年々増加し、診断や治療に対する社会的なニーズが高まっている。ICG蛍光を用いた手術法など多数の臨床研究で成果を上げ、乳がん研究をけん引してきた、京都大学乳腺外科の戸井雅和教授に、講座の特徴や研究の動向を聞いた。

─講座の特徴について。

 世界レベルで高水準の診療と、新しい診断・治療につながる研究を行い、医療を発展させていくことが大きな役割です。

 診断では、放射線診断科と連携して、画像診断についての複数の新しい知見を報告し、診療に組み込んできました。診断デバイスの開発にも力を注ぎ、乳房専用のPETマシンを開発したほか、現在は光超音波診断機器を開発中。さらに病理診断学講座と共同で、乳がんの予後や治療効果を予測する病理診断システムを開発し、それを利用して臨床を進めています。ゲノム解析、遺伝子解析にも注目が集まっており、私たちも、遺伝性乳がんに関する研究を遺伝子診療部とともに進めています。

 手術では、私たちも研究を進めてきたICG蛍光ガイド技術の活用が、センチネルリンパ節生検における世界標準の一つとなっています。最近、プロジェクションマッピング技術を応用し、術野に蛍光像を投影することで、より安全に低侵襲な手術を可能にする装置を産学連携で開発。臨床に取り入れています。

 経口5―FU剤を用いた新治療法に関する臨床研究、抗HER2療法や免疫療法の開発にも注力。さまざまなガイドラインに対する認識の統一と、治療成績の向上を目指し「京都乳癌(がん)コンセンサス会議」という国際会議も2009年から開催しています。

 乳がんは患者の多くが女性であるため診療・研究の入り口は狭く見えますが、入ってみると、とてつもなく広く多様です。乳がんに関与しているエストロゲンは多機能で、研究対象として、非常に興味深いものがあります。

─現状は。

 近年の傾向は大きく三つ。一つ目は、乳がんの患者数が世界的に増え続けていること。東アジアはもちろん南アジアでも非常に増えています。同時に治療も進歩し、日本における治療成績(10年生存率)は2000年前後から年間1%程度の割合で改善。今後も同様の傾向が続くと思います。

 二つ目は、治療の副作用回避・抑制が、非常に大きなテーマになっていること。三つ目は、必要のない人にも治療を行ってしまう「オーバートリートメント」と必要な治療が施されない「アンダートリートメント」の回避。必要な人に必要な治療ができるようにしようという流れがあります。

 乳腺外科医の人数は、患者数の増加により、相対的に足りなくなっています。乳腺外科の医師は女性が半数を占めているので、その状況に合わせた体制を作っていくことが重要です。本学には男女共同参画支援センターがあり、女性医師のキャリアパスについて、さまざまな観点から努力が行われています。

─今後は。

 治療法開発、副作用の抑制、オーバー・アンダートリートメントの回避という3点については今後も研究が進み、集学的なチーム医療がより重要になっていくでしょう。情報学や工学、薬理学などと連携した学際的な研究が進展していくと思います。

 遺伝子レベルの情報を組み合わせて活用していくのはこれからです。分子レベルの情報や画像情報に臨床情報を組み入れた研究が、何らかの形で大きく進むのではないでしょうか。

 アジアで乳がん患者が増加したことで、アジア発の研究への期待が高まっています。その中で、日本は大きな役割を果たし得るのではないかと考えていますし、私たちもそうありたいと思っています。


京都市左京区聖護院川原町54 ☎075─751─3111(代表)
http://www.brca.jp/

この記事を読んだ方は他にこんな記事も読んでいます

最新の記事情報が取得できます

Twitter

「いいね!」ボタンを押すと、最新情報がすぐに確認できるようになります。

Instagram

フォローする」ボタンを押すと、最新情報がすぐにツイート上で確認できるようになります。

Instagram did not return a 200.

コメントはこちらから

[contact-form-7 404 "Not Found"]
メニューを閉じる