九州医事新報社 - 医療・医学の〝今〟を伝えて62年

五感をフルに活用して神経変性疾患に立ち向かう

五感をフルに活用して神経変性疾患に立ち向かう

産業医科大学医学部神経内科学
教授(あだち・ひろあき)

1991年名古屋大学医学部卒業。
同大学院医学系研究科COE特任講師、同COE特任准教授、
同難治性神経疾患治療学寄附講座准教授などを経て、
2014年から現職。

 高齢化を背景に社会的な関心が高まるアルツハイマー型認知症や脳血管障害への対策。これらの疾患と向き合い、戦い続けるドクターが感じる現状とは。また、専門性を高めるにはどのような資質が求められるのだろうか。産業医科大学の神経内科学を率いる足立弘明教授に話を聞いた。

―今、感じていることは。

 産医科大学病院の医療圏は、北九州市の西部エリア全体が対象です。多くの地方都市に共通していることだと思いますが、北九州市でも人口の減少や高齢化が進んでおり、若い人の流出が止まらないという現状があります。

 「医師の数」という側面でも厳しい状況を迎えています。高齢の患者さんの増加に対して、診療するドクターが十分にそろっているとは言い難いのです。大学病院が派遣できる人員も、かつてと比較すると半数になりました。

 患者さんを診療するにはマンパワー不足。新専門医制度では大都市圏への集中を抑える試みがなされていますが、そのぶん地方へ医師が来るわけではありません。最初の診断は当脳神経内科が担当し、その後の治療は専門ではない先生にフォローしていただく。そのような連携で対応しているケースもあります。

―この領域において求められる資質は。

 「神経を診察する」というのが私たちの役割です。MRIやCTといった医療機器を駆使するわけですが、それだけに頼ることはしません。患者さんとの直接の対話を重視して「自分の耳で聞いたこと」と「実際に自分の目で診たこと」を総合的に判断していくことが大切です。

 例えば、私たちは検査でハンマーなどの道具を使うことがあります。教科書で得た知識だけでなく、自らの五感を用いて診察することが欠かせないのです。まずは、このようなアプローチの医療に関心を持つことができるかどうか。この領域の医師に求められる一つの条件とも言えるでしょう。

 そして、「神経に関連する領域は難しいのではないか」というイメージを抱く人は少なくないと思います。そうした先入観に左右されないことも肝要だと考えています。最近はAIによる診断も注目されています。もちろん、AIの判断がすべて正しいわけではないでしょう。現時点では、効率化などにうまく活用できればというスタンスです。

―現在の研究は。

 私は神経変性疾患の病態解明の研究に長く取り組んできました。神経変性疾患には、家族には遺伝しない孤発性のものと、遺伝性のものがあります。遺伝性の神経変性疾患については原因遺伝子を解析することで、将来的な治療法の確立が期待できます。

 孤発性の疾患が発症するメカニズムは、いまだ全容は解明されていません。その代表的な疾患がアルツハイマー型認知症です。主な原因として、アミロイドβという物質が脳に蓄積されることによって引き起こされるとされています。

 世界中でアミロイドβの蓄積の抑制を目指した研究が進行しています。さまざまな薬剤を用いた臨床試験も実施されてきましたが、現在、アルツハイマー型認知症の進行そのものを完全に止めることはできていません。

 神経変性疾患に共通する現象があります。タンパク質が固まりやすくなって蓄積し、それに長期間さらされた神経細胞が死んでいくのです。症状が進行する過程で起こっていることは分かっていますが、なぜそれが始まるのか、根本的な部分に関してはまだ解明できていません。産業医科大学の神経内科学から、インパクトのある研究成果を発信できればと考えています。そして若手のドクターがもっと神経変性疾患に関心を持ってもらえるよう努めたいですね。

産業医科大学医学部神経内科学
福岡県北九州市八幡西区医生ケ丘1─1
☎093─603─1611(代表)
http://uoeh-neurology.org/

この記事を読んだ方は他にこんな記事も読んでいます

最新の記事情報が取得できます

Twitter

「いいね!」ボタンを押すと、最新情報がすぐに確認できるようになります。

Instagram

フォローする」ボタンを押すと、最新情報がすぐにツイート上で確認できるようになります。

コメントはこちらから

メニューを閉じる