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予防から緩和ケアまで心不全患者に寄り添う

予防から緩和ケアまで心不全患者に寄り添う

医療法人わかば会
濵野 裕 理事長(はまの・ゆたか)

1979年久留米大学医学部卒業。
大阪大学医学部附属病院第1内科、桜橋渡辺病院を経て、
1988年医療法人わかば会俵町浜野病院入職、2002年から現職。

 佐世保市の医療法人わかば会。俵町浜野病院にグループホームやデイケアなどを併設し、その他、有料老人ホーム「わかばテラス」で独自の「里山療法」にも取り組んでいる。

―近年の状況は 。

 新型コロナ感染症が世界中を混乱に陥らせる前、日本の医療界の最大関心事は、超高齢化による認知症の増加と心不全の急増(心不全パンデミック)であったと思います。65歳以上の心不全新規発症は増加の一途で、85歳以上の死因は循環器疾患がトップ。発症後は慢性心不全となり、心不全の5年生存率は50%程度で生命予後はがんよりも不良と言われます。

 発症を防ぐには、生活習慣病の管理が重要です。また、急性期を脱した後の増悪予防の要も自己管理です。ただ、高齢者の場合、認知症や独居、老老介護などの理由で、薬の服用や減塩・飲水制限などの指示を守ることが困難な場合が多々あります。

 そこでケアスタッフなど多職種で連携して適切なタイミングで医療職が介入し、再入院を減らすことが重要。また悪化予防には心臓リハビリ(心リハ)が有効です。

 これは継続して行う必要がありますが、保険診療での算定期間は150日までで、慢性心不全の増悪を防ぐには短すぎます。そこで私は介護保険の制度を利用し、通所リハや訪問リハの仕組みの中で心リハを行っています。

 高齢者の慢性心不全には長期にわたる心リハ継続が不可欠であり、モチベーション維持のための工夫が必要です。10年前から私の運営する有料老人ホームで行っている「里山療法」を心リハにも取り入れるようにしています。

―「里山療法」を用いた心臓リハビリとは。

 「里山療法」は、薬物療法だけに頼らない認知活性化療法として始めた活動です。有料老人ホームの庭の各所に設えた菜園や棚田で野菜や米を入居者自らの手で育て、収穫し、それらを調理して食べる。こうした活動で入居者の方々の自立心が高まり、喜びや生きがい感が持てるようになり、認知機能の改善も見られました。

 心リハにも役立つのではないかと心疾患の患者さんにも取り入れるようになったのは数年前から。全身の運動にもなりますし、活動の様子を見ることで「今日は肩で息をして苦しそうだな」と病状の早期発見につながることもあります。全人的心リハとして有用だと実感しています。

 2017年秋、大阪で開催された第31回日本臨床内科医学会で「認知症の薬物療法、非薬物療法、新たな非薬物療法(里山療法)の効果―治療開始1年以上の経過例について」について発表し、ポスター賞をいただきました。

 その際、参加された先生方から都市部でもできないかという声を多くいただき、生きがい感を持てる心リハの仕組みを大阪でも展開しようと準備を進めています。

2022年開設予定の上町メディカルテラス(イメージ)

 2022年5月、大阪市中央区に、上町メディカルテラスを開設します。現在大阪はコロナ禍で大変な状況ですが、ウィズコロナの時代に対応する医療設備を完備し、ここを基点に里山療法を外来診療や通所リハの仕組みに取り入れ、在宅医療、在宅心リハ、そして心不全に対する緩和医療へとつなげていきたいと思っています。

 医師として患者さんのQOL だけではなくQOD (デス)にも気を配り、ご本人やご家族のつらさや苦しみを少しでも和らげるため、里山療法を活用していこうと強く思っています。

医療法人わかば会 俵町浜野病院
長崎県佐世保市俵町22―1
☎0956―22―6548(代表)
http://www.wakabakai.or.jp/

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